防衛省、「代執行」による辺野古工事に着手 沖縄知事「乱暴で粗雑」

小野太郎 笹川翔平
【動画】辺野古沖で軟弱地盤の改良工事が着工=平野真大撮影

 米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり、防衛省は10日、軟弱地盤が広がる辺野古北側の大浦湾で工事を始めた。地盤の改良工事のための設計変更を国が県に代わって承認した初の「代執行」を経て、県が認めなかった区域での着工に踏み切った。沖縄県玉城デニー知事は強く反発している。

 防衛省は10日午後、大浦湾に浮かぶ作業船上の重機から石材を海中に投下した。護岸造成のための海上ヤード(資材置き場)を設置する。

 当初12日の着工が想定されていたが、林芳正官房長官は10日の記者会見で「所要の準備が整ったことから本日、大浦湾側の工事に着手するという報告を防衛省から受けた」と述べた。工期は9年3カ月を見込み、「本日の着手が起点にあたる」との認識を示した。

 辺野古移設計画をめぐっては、2013年に当時の知事が防衛省の埋め立て申請を承認し、18年に米軍キャンプ・シュワブの南側への土砂投入が始まった。北側の大浦湾では軟弱地盤が確認され、防衛省が20年に設計変更を申請。昨年9月に最高裁で県が敗訴し、承認する法的義務が確定した後も玉城氏が承認しなかったため、斉藤鉄夫国土交通相が昨年12月28日、県の代わりに承認を代執行した。国が地方自治体の事務を代執行したのは初めてで、防衛省は県の同意がなくても工事に着手することが可能になった。

 玉城氏は10日、着工を受けて記者団の取材に応じ、「知事の権限を奪う代執行に至り、さらに工事の着手が強行されたことは、(政府が主張する)『丁寧な説明』とは到底真逆の極めて乱暴で粗雑な対応がなされたものと言わざるを得ない」と批判した。

 防衛省は今後、7万本以上の砂の杭を打ち込む地盤改良工事を実施した上で土砂を投入する。計画通り工事が進んでも、代替施設の供用開始まで12年かかる。総工費も当初見込みの約2・7倍の約9300億円に膨らんでいる…

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
小野太郎
政治部|防衛省担当
専門・関心分野
国内政治、沖縄、安全保障
  • commentatorHeader
    阿部藹
    (琉球大学客員研究員・IAm共同代表)
    2024年1月11日22時41分 投稿
    【視点】

    先月20日の代執行訴訟の判決では、付言において国に「沖縄県民の心情に寄り添った政策実現」を求めており、国と県が「国と沖縄県とが相互理解に向けて対話を重ねる」ことを求めていた。しかし、付言が求める対話はなく、さらに当初今月12日に想定されてい

    …続きを読む