南アジアのバングラデシュで7日に総選挙があり、政権与党が勝利しました。しかし与党側による弾圧に反発した最大野党がボイコットを決め、「与党以外に選択肢がない」とも指摘された選挙でした。なぜこのような事態になったのでしょうか。同国の政治に詳しい日本貿易振興機構アジア経済研究所の村山真弓理事に聞きました。
――野党は関係者2万人以上が与党側に拘束され、不正選挙だと主張しています。
最初から与党アワミ連盟(AL)の勝利が決まっていた選挙でした。バングラデシュではALと最大野党バングラデシュ民族主義党(BNP)の二大政党が存在し、1990年代以降双方が政権を担ってきましたが、時の与党による野党弾圧は過去にもありました。
今回、ALはBNP指導者や支持者をこれまで以上に徹底的に弾圧することで、選挙に参加させない姿勢がうかがえました。同時に党公認の無所属候補の出馬を認めることで、投票率を高めるといった措置も取られました。
「選択肢がない選挙」を強いられた国民も苦しかったはずです。弾圧は民主主義や自由、公正といった価値観への軽視と言え、次の世代に失望と政治への無関心をもたらしかねません。今に始まったことではないですが、経済的理由以外でも国を出たいと考える若者が増えれば、長期的な負の影響は大きいでしょう。
日本の日の丸と国旗がとても似ていて、無関係とも思えない南アジアの国、バングラデシュ。かつて「新宿中村屋」にカレーを伝えたのも…?記事後半では、実は深い両国関係についても説明していただきました。
――なぜ与党は弾圧するのでしょうか。
二大政党はいずれも3割ずつの基礎票を持つと言われ、残りの4割が浮動票とみられています。つまり選挙が公正に実施されれば、どちらも勝つ可能性はあるわけです。実際、91年から2008年までに5回行われた総選挙のうち4回は中立的な選挙管理内閣の下で実施され、毎回政権交代が実現してきました。
ALからすれば、政権を奪われると今度は自分たちが弾圧される可能性があり、そうした恐怖が弾圧の背景にあるのでしょう。
――今回の投票率は40%と…