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NHKへの不満と批判……前会長がパブコメに異例の意見 文書を入手

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 昨年10~11月にあったNHKの次期中期経営計画案に対する意見募集(パブリックコメント)に、同1月まで会長を務めていた前田晃伸氏(79)が意見を寄せていたことがわかった。前会長の前田氏が提出した意見書の写しを朝日新聞が入手した。意見書には、稲葉延雄・現会長下で策定された計画案への批判などがつづられていた。

 NHKは昨年10月に、2024年度からの3カ年の中期経営計画案を公表し、計画案を了承したNHK経営委員会が約1カ月にわたって意見募集をしていた。

 前田氏が今回提出した意見書は400字詰めの原稿用紙5枚。すべて手書きで記されていた。前田氏は、会長時代に管理職登用の選抜試験を導入するなどの人事制度改革を進めたが、一部の現場から強い反発が起き、稲葉会長は改革の検証作業に着手。NHK関係者によると、制度の一部を廃止する方針だという。

 こうした点について、前田氏は意見書で「新体制となり、改革派の職員は、次々と姿を消す事態となった。1月以降、経営改革は止まり、古い体制を維持する方向にカジを切ったことは、誠に残念である」などと記している。

 また、前田氏は、NHKが23年度予算で未認可の配信業務に絡む不適切な支出の決定に関わっていたとして、退職金を10%減額して支給されたが、この問題についても意見書で言及。支出の決定は専門家が放送法違反を指摘しているが、「『冤罪(えんざい)デッチ上げ事件』だ」と不満をぶちまけ、「放送法違反のおそれがあるという指摘は、完全に間違い」と意見をつづった。

 前田氏の意見書について、NHK幹部の一人は、不適切な支出の問題については「国会などで放送法上の問題を指摘されて対応してきた」と述べ、「NHKと前会長で争う次元の話ではない」と話す。また、別の幹部は、「人事制度改革などでは事実誤認に基づく主張も多く、NHKとして反論すべきところは見解を用意する」と突き放す。

 稲葉会長は昨年12月20日の定例会見で「私どもとしてもああいうパブリックコメントがあったことについて、若干当惑はしているが、権利の行使なので誠実にお答えしてお返ししようと考えている」と説明しつつ「(前田氏が)おっしゃっていることが正しいということではない」と語った。

 前田氏のものを含む各意見は9日に公開され、現執行部側がこれら意見について考えを説明する予定。

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