百科事典は「人生最大の買い物やった」 若き造船工が手に入れた宝物

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後藤遼太

 造船所の若い工員たちが暮らす古びた独身寮をひとりのセールスマンが訪れたのは、1968年初秋のことだった。

 持ち込んだのは「世界大百科事典」。全26巻の値段は5万2千円という。

 高木朝雄さん(76)のその月の月給は3万2700円。それを上回る買い物だったが、現金で一括払いした。

 「オレは周りとは違うみたいな、見えもあったんかな。20歳の造船工にとっちゃ、人生最大の買い物やったねえ」

 終戦の2年後、愛知県の山あ…

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    佐倉統
    (東京大学大学院教授=科学技術社会論)
    2024年1月6日17時44分 投稿
    【視点】

    今はとんと見なくなった百科事典。なんでもインターネットで調べられる時代にあって、もはや用済みの媒体のように思われがちだが、編集や執筆に専門家と本作りのプロが多数参加している信頼感と安定感は、ネットでは決して得られないものだ。項目の取捨選択も

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