第9回勢力割拠で崩れる中央集権 問われる「国家」 ミャンマーのあり方は

 ミャンマーで国軍がクーデターにより全権を掌握してから3年。市民への弾圧の手を緩めない国軍に、少数民族と民主派の軍事勢力が攻勢をかけ、国内の混乱がさらに深まっています。ミャンマーにとってこの3年はどんな意味を持ち、今後の国のあり方はどうなるのか。アジア経済研究所の長田紀之研究員に聞きました。

おさだ・のりゆき 1980年生まれ。2015年からアジア経済研究所研究員。著書に「ミャンマー2015年総選挙 アウンサンスーチー新政権はいかに誕生したのか」(共著)など。

 ――クーデターからの3年間をどう見ていますか。

 ミャンマーは現代史において重要な転機にあると思っています。2011年に軍政から民政移管し、その後の10年は、政治的な自由化と経済の活況のもと、将来について楽観する見方が大勢を占めていました。

 しかし、クーデター後は、それまでとはまったく違ったかたちで将来を構想せねばならない局面に至りました。1948年の独立以降の歴史の中で、多数派民族中心のナショナリズムや軍の政治関与が深く根付いていたのです。今、ミャンマーの人々はそうした国のあり方を根本的に考え直そうとしています。

 ――昨秋、少数民族に民主派も加わった武装勢力による攻勢が始まり、国軍の弱体化や兵員不足も指摘されています。

 国軍がこれだけ大規模に押し込まれるのは、60年代に政権を担って以来なかったことです。だからと言ってすぐに軍が倒れるということはないでしょうが、未曽有の事態にはなっていると思います。

 その背景としては、軍側の兵士の訓練不足や士気の低さという事情もあります。90年代ごろから、戦闘があまりない中で軍自体が官僚集団化しました。兵器は近代化していますが、魅力的なビジョンを打ち出して、特に若者への広範なアピールができていない。また、高級将校は経済的に恵まれている一方で、現場で戦う兵士の待遇は非常に悪いという実態もあるようです。

ミャンマーに関与深める中国 狙いは「権益」

 ――一部の少数民族武装勢力への武器供与が指摘されるなど中国の関与も無視できません。

 中国の関わり方は非常に複雑です。国軍や複数の武装勢力と多角的につながりを持って、事態をうまくコントロールしようとしています。

 中国はミャンマー国内に、パ…

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