闇バイトに応募の少年に「キム」は… 「お前の家、分かってんだよ」

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根本快
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 当時18歳だった少年は、広島市西区で強盗傷害事件を起こした。きっかけは、知人に請求された20万円を用意しようと、SNSで見つけた「闇バイト」だった。親子3人が重軽傷を負った事件。広島地裁で昨年開かれた裁判員裁判で、少年が事件に加わった経緯や組織的な手口が明らかになった。

 2023年12月7日、広島市中区の広島城の前にある広島地裁302号法廷。神奈川県海老名市の少年(19)は頭を短く刈り上げ、黒色のスーツ姿で出廷した。

 検察官が起訴状を読み上げる。22年12月、広島市西区の店舗兼住宅で親子3人を暴行し、現金250万円と2440万円相当の金品を奪った――。強盗傷害と住居侵入の罪に問われた少年は「間違いありません」と、小さな声で認めた。

 その後の検察官や弁護人の被告人質問で、少年が犯行に至るまでの経緯がつまびらかになった。

中学時代は部活に励み、高校受験

 中学生の頃は、全国レベルのバドミントン部で練習に励んだ。高校受験を控え、志望校への合格をめざして、朝から晩まで図書館で勉強した。

 だが、思うように成績は伸びず、志望校とは別の高校に進んだ。早々に部活をやめると、次第に非行に走るようになり、地元の暴走族に加わった。

 少年は自身の性格を「寂しがり屋で、人に流されやすい性格だと思います」と述べた。共働きの両親のもとで抱えた孤独感を、仲間といることで紛らわせた。

 窃盗や恐喝事件を起こし、少年院に2度入った。2度目の少年院では、生活態度が認められて院内の賞をもらった。22年7月に仮退院。高卒認定試験を受け、夜の倉庫や屋台でのアルバイトに精を出した。美容の専門学校に行く、という目標があった。

 その矢先、付き合いのあった暴走族のリーダーからSNSで連絡があった。「お前ちゃんと(暴走族を)抜けてないだろ」。迷惑料名目で20万円を要求された。アルバイト代から5万円を払ったが、要求は続き、当時交際していた女性の姉から5万円を借りて渡した。

 女性の姉からその後、少年の別のトラブルに絡んで、「迷惑料」として20万円を要求されるようになった。支払いを迫られ、男4人から殴られたこともあった。

 その頃から、少年は再び不良仲間といるようになり、家には週2~3回しか帰らなくなった。バイトはほとんどしなくなり、「迷惑料」は払えなかった。

 知人20人ほどに借金を申し込むと、声をかけた一人から「闇バイトやってみろよ」とすすめられた。ツイッター(現X)で検索した。

 「働いて工面しようと思わなかったのはなぜ」と弁護人から問われた少年は、「一気に全部払って終わりにしたかった」と言った。

指示を受け、マイナカードの写しを送信

 少年が闇バイトを検索してメッセージを送ると、返信があった。匿名性の高い通信アプリ「テレグラム」をスマートフォンにダウンロードするよう求められ、「キム」という人物を紹介された。

 テレグラムで連絡を取るよう…

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