「性被害の問題、日本固有じゃない」 伊藤詩織さん、米映画祭に出品

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米ユタ州パークシティー=五十嵐大介
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 1月に米ユタ州で開かれたインディペンデント映画の祭典「サンダンス映画祭」で、性被害を実名で告発したジャーナリスト伊藤詩織さんの初監督映画「Black Box Diaries」(日本公開は未定)が国際長編ドキュメンタリーコンペティション部門に出品された。自らの苦悩を記録した作品だ。

 同映画祭は、インディペンデント(独立)系の映画祭では世界で最も権威がある。報道によると、同部門での出品は日本の監督作品で史上2度目という。

 作品は、2015年に元TBS記者に性的被害を受けた後、伊藤さんが自撮りのiPhone(アイフォーン)に英語で語りかける場面から始まる。

 警察の捜査に不信感を抱いた伊藤さんは、録音などの記録を残し始めた。元記者を準強姦(ごうかん)容疑で告訴したものの、検察は不起訴処分に。17年5月に顔出しで記者会見した後に受けたバッシング、民事訴訟で勝訴するまで、スマホなどで撮影した約400時間の映像をもとに7年越しで仕上げた。

 制作のきっかけは17年、スウェーデン人のジャーナリスト、ハナ・アクビリンさんからの連絡だった。ロンドンを拠点にドキュメンタリーを作っていたアクビリンさんは、知人の日本人女性から伊藤さんの話を聞いた。誹謗(ひぼう)中傷を受けていた伊藤さんに、「私たちの家に来たらいい」と弁護士を通じて連絡した。

上映会、会場から笑いも

 17年7月、ロンドンに旅立った伊藤さんは、アクビリンさんの家に住み込み始める。映画を作った経験がない2人だったが、アクビリンさんがプロデューサーとしてかかわり、作品づくりを本格化させた。

 監督として伊藤さんがこだわったのは、当事者の目線だ。

 性暴力の被害者の話は報道などを通じて第三者から語られることが多い。自分が公の場に出た後は、記者会見の服装などでもバッシングを受けた。「被害者はこうあるべきだ」という固定観念に打ちのめされたという。

 作品の中では、悲しみにうちひしがれる場面とともに、友人と一緒におどけたり、大声で歌を歌ったりする等身大の伊藤さんの姿も描かれている。深刻なテーマにもかかわらず、上映中に何度も会場から笑いが上がった。

 「サバイバーだから常に泣いているわけでもない。ひとりの人間として、(性暴力が被害者に)どのぐらいの影響があるのか、またはないのかも含め、ドキュメンタリーの中で見せたかった」と伊藤さんは話す。

 映画祭では、思わぬハプニン…

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    小林恭子
    (在英ジャーナリスト)
    2024年2月3日19時25分 投稿
    【視点】

    現地の取材も通して、どのように伊藤詩織さんの作品が受け止められたかがよくわかる記事でした。 伊藤さんが制作したこれ以前のドキュメンタリー作品(「孤独死」など)がユーチューブで視聴できるようになっていますが、落ち付いた、非常に優れた作品

    …続きを読む