第14回共存できない二つの正義 それでも戦闘止める「紛争解決学」のヒント

有料記事解なき今を照らすために

聞き手・桜井泉
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 ウクライナや中東での激しい戦いの様子が伝えられ、私たちはときに無力感にさいなまれる。国の内外では、対話より武力を優先する声が高まる。早稲田大学教授の上杉勇司さんは、世界各地の紛争の現場を見てきた。まずは戦闘を止めることを優先する「紛争解決学」について聞いた。

 ――紛争解決学とは、どのような学問ですか。

 「1960年代の英国でオーストラリア人の元外交官、ジョン・バートン氏が立ち上げました。従来の国際政治学や国際関係論では、国家のパワーを重視した権力闘争として国際紛争を捉えていましたが、それでは不十分だ、として生まれました」

 「紛争解決学が関心を寄せてきた対象は内戦です。内戦が国際紛争に発展することはよくあることです。対立する集団間の戦闘をやめさせるにはどうしたらいいか。それを優先します。内戦の場合、和平合意後も同じ国家で共存しなければなりません。和解に向けて環境をどう整えるか、という点も課題です。98年に英領北アイルランド紛争を解決したベルファスト合意では、紛争解決学を学んだ人たちが関与しました」

 ――そもそも紛争はなぜ起きるのですか。

 「紛争解決学では、ベーシック・ヒューマン・ニーズ、つまり人が生きていくうえで必要な欲求が満たされない、だから紛争が起きると考えます」

 ――「衣食住」ですか。

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 「もちろん重要ですが、それ…

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    越智萌
    (立命館大学国際関係研究科准教授)
    2024年1月18日9時20分 投稿
    【視点】

    最後の、人材育成の部分が特に今、多くの方に意識していただきたい問題です。 平和解決学(そのほか、平和学、平和紛争論など多様な類似の分野・呼び方があります)に関する教育プログラムやコースは、欧米や北欧で増えてきてはいるものの、日本ではま

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連載解なき今を照らすために(全14回)

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