文部科学省が「これまで我が国の学校において取組はほとんど行われてきませんでした」と、今年度から始めた「特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業」。いわゆる天才児、ギフテッドと呼ばれるような飛び抜けた才能を持つ子への支援だ。
ただ、民間でのギフテッド教育で先行したNPO法人翔和学園(東京都中野区)の中村朋彦さんは「レベルが高い集団で英才教育を施し一芸を伸ばす、そんな単純なものではなかった」と振り返る。
才能を伸ばす試みがうまくいかなかった理由、挫折から得た教訓、形を変えた新たな試みを聞いた。
連載「天才観測」
将棋の藤井聡太八冠、大リーグMVPの大谷翔平選手。前人未到の境地を切りひらく「天才」の活躍に沸く日が続きます。天才が社会にもたらすもの、人々が天才に託すもの、現代の天才について考えます。
目標はイノベーション、小学生が相対性理論に言及
――ギフテッド教育はどのような経緯で始まったのでしょうか?
「発達障害を抱えている、小学校を不登校といった子どもたちを支援するフリースクールを運営する中で、IQ(知能指数)が飛び抜けて高い子が一定数いることに気がつきました」
「子どもたちと一緒に公園に行くと、すべり台やブランコでの靴飛ばしをして楽しそうに遊びます。子どもらしいなと思ってよくよく会話を聞くと、すべり台では摩擦係数について、靴飛ばしでは射出角度について話し合っている。同年代の一般的な子どもたちとはなじみにくいはずです」
「IQの高さゆえに学校の授業に魅力を感じなかったり、才能の凸凹の凹の部分ばかり指摘されることで意欲をなくしたりする子が多いです。恵まれた才能を生かして凸を伸ばすことに特化すれば、社会にイノベーション(技術革新)を起こす未来のエジソンやアインシュタインが生まれるのではと、2015年にIQ130以上を目安に選抜した小学生によるアカデミックギフテッドクラスを設けました」
――どのような子が集まり、どのような教育をしたのでしょうか?
「イノベーションが目標だったので、特に理数系が得意な子を募集しました。バーチャル嗅覚(きゅうかく)を研究したいという子がいて、人間の五感のバーチャル技術において、視覚や聴覚は研究や実用化が進んでいるものの、嗅覚は遅れているといった関心の高さを持っていました」
「他のクラスで行っている基本的な課程は最小限にして、子どもたちがそれぞれ関心がある分野を重点的に。学習発表では、インターネットを駆使して様々に調べて相対性理論に言及する子もいました。我々では教えられない高度な部分も多く、理系の大学院生や英語講師といった外部の方も講師として招きました」
3年で廃止「指導が間違っていたと認めないといけない」
――意欲的な取り組みで、問題があるとは思えません。なぜそれがうまくいかなかったのでしょうか?
「この子たちの将来の働き場になると想定した、IT企業の技術者や大学の研究者に視察に来てもらいました。ところが評価は厳しいもので、甘さを痛感しました……」
「指摘されたのは『小学生に…
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