常連客のハイスタ難波章浩さんは直談判した このラーメンを継ぎたい

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初見翔

 見渡す限り一面の海が広がる浜辺に、「あっさり」が売りのラーメン店がある。メニューはラーメンかチャーハンセットの二つだけ。学生らに愛され続けた老舗から、味もスタイルも受け継いだ。常連客だった人気バンドのメンバーが、閉店を決めたおかみさんに直談判。オープンから1年が過ぎ、大行列ができる評判の店になった。

 車を降りた途端、波の音と潮の香りが同時に飛び込んできた。浜茶屋(海の家)を改装したという「なみ福」(新潟市西蒲区)は、佐渡島を望む日本海の角田浜海水浴場にぽつんとたたずむ。

 「定番のあっさりで、一番好きな味」。佐藤知哉さん(49)は息子の朝陽さん(18)と市外から訪れた。もう一つの楽しみが記念撮影。このバンドのファンで、「若い頃からよくCDを聞いていた」と話し、メンバーと笑顔で写真に納まった。

「僕に継がせて」断られても思いぶつけた

 ことの始まりは、ラーメン店「楽久(らっきゅう)」(新潟市西区)の閉店。新潟大近くの住宅街で学生や住民に長年親しまれている名店だった。

 パンクバンド「ハイ・スタンダード(ハイスタ)」のボーカル兼ベース、難波章浩さん(53)にとって、楽久は「自分を保ってくれる味」だった。高校生までを過ごした新潟を離れた後、帰省するたびに訪れるようになった。沖縄への移住を経て2009年に戻ると、足しげく通った。

 ラーメンは煮干しで引いただしがベースのあっさり味のスープに、トッピングもチャーシューとメンマ、ネギだけ。パラパラと粒立ちがはっきりしたチャーハンを口に含み、透き通ったスープで腹に流し込むのがお決まりだった。

 店はおかみさんが1人で切り盛りしていた。店内にいつも素敵な音楽を流していて、意気投合。新潟でのライブに毎回のように来てくれた。

 普段と同じようにカウンター…

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