演じることの本質 つながる「他者」と「私」 2023年の舞台から

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増田愛子
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 ウクライナ、そしてパレスチナガザ地区で終わりの見えない戦闘が続く。「共存」や「平和」といった言葉が力なく響き、第三者が何かを口にすることも憚(はばか)られるような厳しい状況に、無力を感じた2023年。「『他者』の物語を、自分の身体を通して語る」という演劇の本質の持つ意味を、改めて考えさせる舞台との出会いがあった。

 名取事務所「占領の囚人たち」(生田みゆき演出)はパレスチナ人政治囚たちと共に、ユダヤ系イスラエル人作家が作り上げたドキュメンタリー演劇。日本の制作陣の現地滞在を経て、東京版として上演された。

 刑務所内の苛烈(かれつ)な状況を描きつつ、抑圧する者とされる者の関係性への肉薄のみを目指す姿勢とは異なる。「演じている」ことを常に意識させる距離感で、観客自身が考える余白を残した構造が印象に残る。

演劇の担当記者が、2023年に見た現代演劇、古典芸能の舞台を振り返ります。

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