第13回人権とは「思いやり」ではない 異質な人への尊厳を大切にするために

有料記事解なき今を照らすために

聞き手 編集委員・豊秀一

 貧困や女性差別、外国人差別などから浮かぶのは、日本社会に引かれた見えない分断線だ。分断を超えて、状況を少しでもよりよく変えるためには何が必要なのか。「武器としての国際人権」(集英社新書)の著書があり、国内外で活動を続ける英国エセックス大学人権センターフェローの藤田早苗さんに話を聞いた。

 ――貧困や差別など日本社会には見えない分断線が引かれている気がします。

 「ふだん英国に住み、日本に来ると各地で大学での講義や一般の講演活動を続けています。昨年12月半ばにあった講演会にトランスジェンダーの方が来られ、私の書いた『武器としての国際人権』が支えになって『自分は生きていてもいいんだと思えるようになった』と言われました」

 「別の講演会では、子どもの頃から『おまえなんか生まれてこなければよかった』と親に虐待されてきたという参加者がいて、こう言うんです。『自分には人権がある、人としての尊厳があるんだと初めて本で知り、助けられました』」

 ――追い込まれている人がたくさんいて、藤田さんの本を読み、励まされ、話を聞きに来ている、と。

 「ショックでした。人権とは、一人ひとりをかけがえのない個人としてリスペクト(尊重)するということでしょう。日本ではそういう価値が十分根付いていないという問題があるようです。人権とは何かという基本が学校で教えられていないことが原因の一つだと考えています。優しさや思いやりを養うことがあたかも人権教育だという考えが根強く、人権の内容について教える本来の人権教育がなされていないことが問題の一つだと思います」

 ――どういうことでしょうか。

 「私はこれを『優しさ・思い…

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