第3回SNSで狙った「最初の2秒」 市の投稿に批判、はまった炎上の構図

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 那覇市に隣接する沖縄県浦添市。その中心部にある市役所の一室で、松本哲治市長(56)は集まった記者らを前に深々と頭を下げた。

 「市長としてやる内容ではなかった。市民をはじめ、ご迷惑をおかけした皆さまに深くおわび申し上げます」

 謝罪の理由は、浦添市が昨年6月、動画投稿アプリ「TikTok」で配信した1本の動画だった。

 長さは1分足らず。市長が自ら出演し、新たにオープンした市内のリゾートホテルの内部を紹介する内容だった。

 動画は、市長が女性とともにホテルの部屋へ入っていく場面から始まる。こんなテロップが挿入されていた。

 「市長が美女とホテルへ」「沖縄のリゾートホテルで若い女性と密会している」「市長は妻子持ち。今回ばかりは本当にまずい」

 動画の途中で、実は女性はホテルの従業員で市長を案内しているだけ、という説明が入るが、終盤には市長が「せっかくなら君も一緒にプールに入らない?」と誘うシーンもあった。

 SNS上では秋ごろから、こうした演出を「女性蔑視」「セクハラ」などと問題視する声が噴出し始めた。地元紙も批判的に報じ、市長は9月、謝罪会見に追い込まれた。

 「女性蔑視やセクハラに当たるとは思わずに投稿してしまった」「何とか(市の観光を)PRしなくては、という焦りが勇み足になってしまった」

 30分ほどの会見で、市長はそう釈明した。

 さらに1カ月後には、動画を投稿したアカウント「TikTok市長」でも改めて、「私自身の認識不足によって継続できない事態を招いてしまったことは、悔やんでも悔やみきれない」と話し、アカウントの終了を宣言した。

「ユーモア」を意識、チェックは男性ばかり

 この動画を企画したのは、県外出身のSNSコンサルタントの男性(33)だった。

 個人や事業者のTikTokや写真投稿アプリ「インスタグラム」のアカウント運営を仕事にしているという。

 取材に応じた男性は「普通にPRしても、沖縄に来る予定のない人からすると、何の興味も持たれない」と話す。

 そこでとくに意識したのが、「最初の2秒間」だったという。

 今回問題となった動画の冒頭で「市長が美女とホテルへ」というテロップを入れたのも、インパクトの強いワードを使うことで続きを見てもらえるようにする狙いだった。

 男性は批判が集まったことに、「今までの動画のように、おもしろいとポジティブに受け止めてもらえると思っていた。誰かを傷つけたり不快にさせたりする意図は全くなかったので想定外だった。大変申し訳ない」としたうえで、こうも話す。

 「100%全員がOKする動…

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    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2024年1月15日18時3分 投稿
    【視点】

    記事を読んでから、試しに「SNS炎上 2023年」で検索してみると、回転寿司での不衛生な迷惑行為を投稿して炎上した「すしテロ」、大阪駅の「性的広告」、「私人逮捕系ユーチューバー」、高級ホテルが日本の旅館を見下したように受け取られかねない動画

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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2024年1月16日11時26分 投稿
    【解説】

    浦添市長の件は、SNSでの発信で拡散し、世界中に知られることになったが、問題はSNSにあるのではなく、その根っこにある価値観の問題だと思う。SNSで受けようとして、最初の二秒にインパクトを出そうとするとしても、この言葉を選んだのはSNSのせ

    …続きを読む