第1回武器輸出制限は「未完の改定」 定義あいまい、日本の影響力にも影

有料記事安保の行方 武器輸出を問う

聞き手・田嶋慶彦

 政府は、武器輸出を制限する「防衛装備移転三原則」と運用指針を改定し、殺傷能力のある武器の完成品を含め、輸出規制を大幅に緩和しました。安全保障政策の大きな転換は日本に何をもたらすのでしょうか。紛争を助長しないための「歯止め」は機能するのでしょうか。拓殖大の佐藤丙午(へいご)教授(安全保障論)に聞きました。

 ――武器輸出は、日本の安全保障にどういう影響を与えますか。

 端的に言えば、日本が輸出先国にとって不可欠なパートナーになるということです。日本の装備品を相手国が使うという一連のサイクルができれば、功利的な話ではありますが、日本の意向を無視することができなくなります。

 ――武器輸出を通じて、そういう関係を築けるのでしょうか。

 安く、良いものを提供することが前提ですが、日本の装備品が不可欠なピースになれば、相手は日本に依存し続けるしかない。我々が米国に依存し続けるしかないのと一緒です。そういう関係性が生まれるので、日本にとっては極めて大きな利点がある。安全保障だけでなく、外交政策上のツールとしても非常に重要になります。

 ――今回、政府はさっそく、米国に地対空ミサイル「パトリオット」の輸出を決定しました。

 インド太平洋地域に展開している米軍の拠点に配備されるのではないかと思います。米陸軍海兵隊の戦術に合わせ、米国からミサイルを持ってくるのは非常に非効率なので、日本製を展開する利点があります。米陸軍や海兵隊の戦術を支援するための兵站(へいたん)を担う重要性はあります。

 ――日本は英国、イタリアと次期戦闘機を共同開発中ですが、今回の改定では、共同開発品の日本から第三国への輸出解禁は先送りしました。

 輸出後のメンテナンスなどの対応は輸出元の国が担うのが一般的です。仮に英国が戦闘機を第三国に輸出した場合、故障などが起きると最初に連絡するのは英国です。日本はソフトウェアや技術の機微な部分に関与できず、英伊を中心に技術開発が進むことになります。もちろん契約の内容次第ですが、そのリスクは重く見るべきでしょう。

 ――今回の改定で武器輸出のハードルは下がりました。今後、パトリオット以外にも日本からの武器輸出は増えていくのでしょうか。

 現状では、日本国産の武器の需要はほぼありません。日本で生産している武器は、他国企業の許可を得て製造している「ライセンス生産品」がほとんどです。日本の他にも作っている国があれば、戦場で使われたことのない日本国産の武器を買おうという気持ちにはなりません。もし政府が輸出を増やしたいなら、運用指針の改定以上に、現行の指針の枠内でできる努力を含め、輸出促進が可能になる制度設計にも時間をかけた方が良いと思います。

武器展示会 見栄え悪い日本ブース

 ――例えばどのような取り組…

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