第3回憧れの軍隊が子どもを殺すのか 元兵士、日本に渡って気づいた人の心
標的とされた建物が、まるでおもちゃの積み木のように一瞬で崩れ落ちる。イスラエル軍の戦闘機による、パレスチナ自治区ガザ地区への空爆だ。2023年10月、テレビで繰り返されるそんな映像を見ながら、胸がうずいた。
埼玉県皆野町に住むイスラエル出身の家具職人ダニー・ネフセタイさん(66)にとって、戦闘機は幼いときの憧れの的だった。
イスラエル中部にある、オレンジやピーカンナッツの畑が広がるモシャブ(協同組合村)で生まれた。
アラブ人との戦争で亡くなった卒業生たちの名前が刻まれた顕彰碑が、通っていた小学校の校庭に立っていた。近くには古い戦闘機も置かれていて、コックピットに乗ることができた。操縦桿(かん)を引くと、尾翼の昇降舵(しょうこうだ)が反る。かっこいい。大空を飛ぶ日を夢見た。
【連載】私のスイッチ 人生の決断
人生には様々な分かれ道があります。迷いや葛藤、別れ……。心の中の「スイッチ」を押して、新しい生き方を選んだ世界の人々の物語をお届けします。
死にたくなければ、相手を殺すしかない
毎年春、イスラエル建国前の戦いで死んだ「英雄」をたたえる学校行事があった。教室の黒板の上には、みんなで作った巨大な横断幕を掲げる。太字のペンでこう書いた。「国のために死ぬのはすばらしい」
軍隊に入ったネフセタイさんは教官からかけられたある言葉に胸が一杯になります。ただ想像が及ばないものもありました。記事後半では、日本の暮らしの中で考えが変遷する様子をたどります。
ホロコーストについても繰り…