記者コラム「多事奏論」 編集委員・高橋純子
いまではすっかり定着しているが、よく考えてみれば「政治とカネ」とは妙な物言いである。「トムとジェリー」「ぐりとぐら」「敏いとうとハッピー&ブルー」と同類。相棒というか腐れ縁というか、切っても切れない関係であることが実にうまく表されてはいるけれど。
朝日新聞データベースを引くと、初出は1956年4月6日付朝刊、経済学者・都留重人の寄稿だった。「危機に立つ民主主義」というリレー連載で、見出しはずばり「驚く心こそ必要 ひどすぎる政治とカネの悪縁」。
都留はつづる。
「事情に通じたものほど、政治とカネとの悪縁を、しらずしらずのうちに当り前と思いこむようになっているのではないか」「いまや必要なのは『はだかの王様』にたいする子供のおどろきである」
この2年前、戦後最大の疑獄事件「造船疑獄」で、検察は与党・自由党幹事長だった佐藤栄作の逮捕許諾請求を決定。しかし法相の指揮権発動で捜査は打ち切られ、事件の大半はもみ消された。
「そして同じことがたびたび繰りかえされているうちに、この種のことが政治家仲間やその周辺では『常識』のラク(烙)印をおされ、政治家の良心もマヒし、有権者の反応も固定化して、悪循環は拡大再生産される」
都留は「極端な想定」と断りつつ書いているのだが、67年経ったいま読むと、とてもしっくりくるから情けない。
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