引きこもり「人生終わった」 ゲーム漬け8年、見守る母がくれたもの

有料記事

木下広大

 F5、F5、F5……。

 パソコンに向かって同じキーを打ち続ける。もう何十分になるだろうか。

 はまっていたパソコンゲームは、一定時間プレーするとライフが切れ、プレーできない仕様だった。

 画面を更新する「F5」キーを押し続けて、ライフが回復していく様子をひたすら眺めた。

 ボタンを押しても早く再開できるわけではない。ただ、何もしていない時間が耐えられなかった。

 時刻はちょうどお昼時。昼食を抜いてキーを押し続けた。同級生たちは今頃給食を食べているころだろうか。俺、一線を越えちゃってるな、と思った。

ゲームでは最強 現実は「レベル1」

 高松市の宮武将大さん(37)が学校に行かなくなったのは、小学6年生の時だ。

 きっかけは、勉強へのストレスだった。暗記はできたが、思考力が問われるような問題には、どの教科もついていけないことが多くなった。

 学校に着いたとたん、帰る理由を探すようになった。実際、ストレスのせいかおなかが痛くなったり、熱が出たりした。

 早退を繰り返すうちに、勉強はさらに遅れ、行きたくない気持ちは膨らんだ。

 不登校の期間はあっという間に月単位になり、やがて年単位に膨らんだ。中学に上がっても、学校には行けなかった。

 「俺、もう終わったな」

 家にいてもすることがない。生きるのをあきらめることさえも頭によぎった。

 そんなとき、身近にあったの…

この記事は有料記事です。残り1892文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
木下広大
コンテンツ編成本部
専門・関心分野
ドキュメンタリー制作、ポッドキャスト
  • commentatorHeader
    マライ・メントライン
    (よろず物書き業・翻訳家)
    2023年12月25日6時54分 投稿
    【視点】

    この記事で最も気になるのは「母の発想の転換」である。記事中、臨床心理士からのアドバイスを受けたという話が出てくるが、「無理に学校に行かせるのではなく、しばらく休ませてもいいのでは――」というコトバから、誰もがあのような効果的なアクションを起

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    インベカヲリ★
    (写真家・ノンフィクションライター)
    2023年12月26日17時43分 投稿
    【視点】

    不登校の話とは違うけれど、私の場合、何もしないと発狂するタイプなので、引きこもるということができない。この方のようにゲームが楽しいという感覚もないので、部屋でジッとすることができず、とにかく一人で出歩いてしまう。子ども時代は、行動も制限され

    …続きを読む