消えた郵便貯金、「消滅制度知らなかった」は救済せず 新基準を公表

藤田知也
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 一定期間が過ぎて貯金者の権利が消えた郵便貯金が急増している問題で、郵政管理・支援機構が20日、来年から適用する返金(払い戻し)対応の新基準を公表した。救済対象の拡大は一部の事例に絞り、大部分は従来の基準を変えない。消滅制度を知らずに貯金を失った顧客がどこまで救われるかはわからないままだ。

 郵政民営化前に預けた定額貯金などは、旧郵便貯金法により満期後約20年で貯金者の権利が消える。民間銀行にはない特殊な制度で、2021年度は457億円が消滅。総務省が「預金者に寄り添う観点での見直し」(松本剛明総務相)を求め、救済拡大の範囲が焦点になっていた。

 新基準では従来と同様、貯金を引き出せなかった「真にやむを得ない事情」がないと返金されない。天災や事故、障害、海外滞在、親族の介護・看護などが事例として示されている。

 主な変更点は、事情を示す証明書類を求めず(相続した貯金では必要)、貯金の名義人が貯金の存在を知らなかった場合はより柔軟に認めること。書類で事情を証明できなかったケースや、子や孫らの名義でつくられた貯金の一部が、新たに救われる可能性がある。

 ただ、貯金の返還を求める顧客の多くは、消滅制度を知らずに貯金を失ったのが実態だ。預入時に消滅リスクを知らせず、周知不足だったことも背景にある。

 機構は今回、申請書類の注意書きに「消滅制度を知らなかった」との理由だけでは返金対象としないことを明記。催告書が不達だった場合も、現住所を知らせなかった「困難な事情」を説明できなければ救済対象とはしない。このため、貯金を失った実情を率直に伝えるだけでは救われない顧客が多いとみられる。(藤田知也)

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