対ASEAN、中国ができぬ支援策 日本に求められる「バランサー」

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聞き手・高橋杏璃

 岸田文雄首相は17日、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との友好50周年を記念した特別首脳会議を開きました。中国が軍事・経済的影響力を強め、米中競争の舞台となっているASEAN諸国に対して、日本はどう関与していくべきか。湯沢武・法政大グローバル教養学部教授(国際関係学)に聞きました。

 ――岸田首相は今回の特別首脳会議で「法の支配」の重要性を訴えました。

 「法の支配」の尊重という訴えは、ASEANの中で一部の国にしか響かないと思います。

 確かにASEANは、2007年にASEAN憲章を制定して以来、「法の支配」の強化を掲げ、「ルールに基づく共同体」の構築に取り組んできました。ただ、現状として、ASEAN諸国間に「法の支配」が根付くには程遠い状況にあります。

 例えば、ミャンマーでの軍事クーデターや民主化運動弾圧に対し、インドネシアやマレーシア、シンガポールはASEAN憲章違反だとの観点から比較的厳しい対応をとっていますが、カンボジア、タイといった国々は、憲章などおかまいなく、国軍側を支持しています。

 ――日本は東南アジアで長年、民主化をめぐる法整備を支援してきました。

 カンボジアには20年以上、法整備支援をしてきましたが、結局は独裁政権が続いています。大国による価値観の押し付けはASEANが最もいやがることですが、今後は、法を運用する側への働きかけとして、民主化支援に踏み込む必要があると思います。ASEANが民主化の方向に進まない限り、法の支配は進みません。

 例えば今年ASEAN議長国のインドネシアでは、ミャンマーの軍政と反軍政・民主化グループとの対話を実現すべく、水面下で動いてきました。地域で信頼度が高い日本なら、同じようなことができるのではないでしょうか。

 ――東南アジアは米中競争の主舞台となっています。米中競争は東南アジアにどのような影響を及ぼしていますか。

 米中競争の負の影響は主に三つあります。

 一つ目は、中国の海洋進出で…

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