疎遠だった弟の死、初めて知る生き様 同じ医師として兄が問う過労死

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枝松佑樹

 昨年5月17日の夜。大阪府内の病院に勤める男性医師(31)は、救急車がひっきりなしに運んでくる新型コロナウイルス感染症の患者を治療していた。

 「今夜も寝られへんかな」

 ふと携帯を見ると、母から無数の着信が入っていた。折り返すと、取り乱した声が響いた。

 「しんちゃんの心臓が止まってる! どうしたらええの!」

 当直を交代してもらい、すぐ神戸市の弟の家に駆けつけた。たくさんの警察官がいて、母は冷たくなった弟にすがり、言葉にならない叫び声を上げていた。

 医師として、自死をはかった患者を何度も診てきた。それでも現実感がなく、頭が真っ白になった。

 なぜ、どうして――。

     ◇◇◇

 四つ下の弟の高島晨伍(しんご)さん(当時26)とは、決して仲良しの兄弟というわけではなかった。

 晨伍さんは、小学生の頃から…

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    田中俊之
    (大妻女子大学准教授 男性学研究者)
    2023年12月20日11時47分 投稿
    【視点】

    生きるために人は働いているのですから、仕事が原因で人が亡くなることはあってはならないことです。ワークライフバランスのライフを生命と訳せば、仕事と生命のバランスという意味になります。生命を削ってまで仕事をしてはいけません。ただ、この記事でも分

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    辻外記子
    (朝日新聞科学みらい部大阪担当部長)
    2023年12月17日9時45分 投稿
    【視点】

    高島さんが亡くなったという一報を聞いたとき、かつて取材をした何人かのお顔が浮かびました。医師として懸命に働いていたご家族を亡くした方々。配偶者の場合もあれば、お子さんを亡くした方もいました。時は流れていま、高島さんのお兄さんらが、苦しみなが

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