裏金疑惑は平成の二つの置き土産 歴史で読み解く政治とカネと自民党

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青山学院大学教授・小宮京=寄稿

 自民党が激震に見舞われている。

 自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の政治資金パーティーを巡る問題に岸田文雄政権は翻弄(ほんろう)され、首相は安倍派に所属する官房長官の松野博一、経済産業相の西村康稔ら4閣僚を交代させ、後任の官房長官に岸田派の林芳正を、経産相に無派閥の齋藤健を起用するなど、対策に追われている。

 朝日新聞によると、パーティー収入の一部を所属議員にキックバック(還流)した金額は、直近5年間で数億円に上る疑いがあるという。これだけの金額を組織的に裏金化していたのが事実だとすれば、歴史に残る事件になるだろう。

 筆者は、戦後間もなくの吉田茂から鳩山一郎への政権交代、平成の政治改革と政権交代、そして民主党政権から自民党の政権復帰といった、日本政治史上の出来事を研究してきた。その視点から振り返ると、「政治とカネ」の問題は自民党政権で時に噴出する“宿痾(しゅくあ)”でもあった。

 本稿では、昭和から平成にかけて自民党を揺るがせた「政治とカネ」問題と、それにまつわる政治上の動きに目を向けつつ、2023(令和5)年に噴出した裏金疑惑について、現段階での見立てを示したい。あらかじめ筆者の仮説を述べると、いま起きていることは、平成の二つの「置き土産」とも形容できるのではないか。以下、詳述する。

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