アナザーノート 編集委員・大月規義
原発事故を取材して12年余りたっても、原稿にお叱りを受けることがある。
10月下旬。取材拠点の福島県南相馬市にいると、原発裁判でお世話になっている東京の弁護士、白井剣さんからの電話が鳴った。会って話したいことがあるという。電話では具体的な用件は言わなかった。そのときは、まさか私の書いた記事が「問題」になっているとは思わなかった。
白井さんは、福島県浪江町にある津島地区の約630人が原告になった「津島訴訟」を担当する。東京電力福島第一原発事故の被害者が起こした全国約30件の集団訴訟の一つだ。
津島訴訟の被告は東電と国。一審では原告が勝訴し、現在、仙台高裁の控訴審で争っている。
白井さんの弁護士事務所で、記事のコピーを見せられた。5月26日付の朝日新聞福島版「東電の姿勢 原告批判 『なぜ津島で賠償状況を』」という記事だった。
何が問題だったのか。約半年前にさかのぼる。
ニュースレター「アナザーノート」
アナザーノートは、紙⾯やデジタルでは公開していないオリジナル記事をメールで先⾏配信する新たなスタイルのニュースレターです。今回は12⽉10⽇号をWEB版でお届けします。レター未登録の⽅は⽂末のリンクから無料登録できます。
■賠償金を返してでも………
【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら
- 【視点】
取材対象や協力者の怒りや悲しみに共感し、あるいは、少しでも力になりたいと思って書いた記事が、逆に相手の迷惑になり、時にその傷を深めることになる−−。「記者」という仕事をしている以上、(常に気をつけてはいるものの)逃れられない〝宿命〟のよう
…続きを読む