ほんとうは選挙に強い女性候補、二つの条件 元最年少女性市長の分析

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経営者・弁護士 越直美=寄稿

Re:Ron連載「社会のかたち 越直美の実践」第3回

 11月12日に投開票された京都府八幡市長選で、33歳の川田翔子氏が当選しました。私が2012年に36歳で大津市長になった当時、最年少の女性市長でした。その後、2020年には36歳の内藤佐和子・徳島市長が当選し、川田市長は、それ以来の最年少の女性市長となります。

 最年少女性市長の誕生をうれしく感じると同時に、私が当選してからすでに10年以上が経っており、時間がかかったとも思います。そして、今も女性市町村長は3%弱しかいません。

 このように書くと、女性にとって選挙は難しいように思われますが、ほんとうは女性は選挙に強いというのが、私の持論です。なぜそう考えるのか。以下、理由を述べます。

 2012年1月、私は市長選に挑戦しました。相手は3期目を目指す現職の男性、共産党の女性でした。大津市で育ちはしましたが、34万市民のうち私のことを知っているのはごく一部だったと思います。

 この連載の1回目「弁護士、市長、今は経営者 『ゴールはスタート』越直美が目指す社会」で書きましたが、私はそれまで弁護士で、直前までアメリカにいました。政治・行政の経験はゼロ。政治的には何の実績もありません。応援してくれた市民のおかげですが、よく当選できたものだと思います。

 選挙は本来、候補者が掲げる政策で判断されるべきです。しかし後で聞いたところでは、最初の電話調査の時点から私がリードしていたそうです。その時点で政策が浸透しているとは思えません。

 有権者が私を選んでくれたのは、「何かを変えてくれそう」という変革への期待だったと思っています。というのは、集会や駅立ちでも、市民の方から「市を変えてほしい」という声を多く聞きました。その中には、「保育園を増やしてほしい」という女性の声もありました。そして、実際に、1期目の選挙のキャッチフレーズは、「4年で変える」でした。

 各種の世論調査を見ると、今の政治に満足している有権者は少ない。また、女性の政治家は少なく、女性の意見が国や自治体の政策に十分反映されているとは言えない。そんななか、既存の政治家とはぱっと見で違う女性が選挙に出ると、有権者の変革への期待や潜在的な不満に訴えかけるのではないでしょうか。

 変革への期待が追い風になるというのは、女性候補に限った話ではありません。若者が選挙に出た場合も同じことが言えます。たとえば今年4月には、全国最年少26歳の高島崚輔・芦屋市長が誕生しました。

 女性が選挙に強いことをデータで明確に示せればいいのですが、残念ながら難しい。しかし、ほんとうは女性が選挙に強いということを、人は感覚的に分かっています。

 “状況証拠”的に言うと、私の1期目選挙は、候補者3人中2人が女性。2期目は、4人中2人が女性。いつも半数以上が女性です。相手の陣営は、私が立候補することを前提に、「女性(私)に男性では勝てないから、女性候補者を選んだ」と聞いたことがあります。選挙の現場では、類似した経歴の男女の候補者がいれば、女性を選ぶという声も最近、耳にしました。

数字が示す有利な条件

 実際のところ、女性候補者は以下の二つの条件のもとで、いっそう有利になります。

 第一に都市部であること。都…

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