EU、世界初の包括的AI規制で大筋合意 日本など外国企業にも影響

ChatGPT

ブリュッセル=牛尾梓

 欧州連合(EU)の行政機関、欧州委員会は9日、世界で初めて人工知能(AI)を包括的に規制する「AI法案」が大筋合意に至ったと発表した。4・5億の域内人口を抱えるEUのルールは今後、各国が追随して「世界標準」になる可能性があり、域内で活動する日本などの外国企業も対応を迫られる。EUは今後細部を詰めた後、2025年後半から26年の施行を目指す。

 欧州委、EUの立法機関にあたる欧州議会、加盟国による3者の非公式会合で合意された法案は、人間の基本的人権を守ることを目指して、利用目的ごとにAIのリスクを四つに分類。最も危険な分類の「許容できないリスク」では、行政が経歴などを使って個人を点数化してAIに信用評価をさせたりすることや、未成年者に危険な行動を促す音声を使ったシステムが対象となり、使用が禁止される。

 2番目に危険とされる「高リスク」には、プロファイリングによる犯罪予測や、入試・採用試験での評価が入った。企業はどのようにAIを使ったか追跡や監査ができるよう記録を残すなどの義務が課される。

 「ChatGPT(チャットGPT)」などの生成AIに使われている汎用(はんよう)性の高いAIモデルを扱う企業などにも、別途義務が課される見通しだ。システムリスクを起こす可能性のあるモデルの場合、リスクの管理と重大インシデントの監視などの義務がある。さらにEUレベルで汎用性の高いAIについて監督する権限を持つ「AI事務局」を設ける。「各国の市場監視当局と並んで、AIに関する拘束力のある規則を施行する世界初の機関となる」という。

 最後まで意見が割れた顔認証を含む生体認証技術は、当初案の通り、公共空間での犯罪捜査や移民管理などの法執行の目的で、リアルタイムに顔認証など遠隔生体認証を使うことが禁止される。「野放図に監視が認められる可能性がある」と全面的な使用の禁止を求めた欧州議会に対し、来年のパリ五輪パラリンピックを見据え、テロ対策のために「許容できないリスク」の分類から外すように求めるフランスなどとの間で、意見が割れていた。

 一方で、安全保障や軍事目的、または研究目的や開発段階のAIについては、規制対象外となった。

 「ゴールは目前」として6日午後に始まった非公式会合だったが、日々進化する技術と、原案から3年近くが経った規制案との大きな隔たりが埋まらず、合意に3日間で計30時間以上を要した。(ブリュッセル=牛尾梓)…

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