第3回「環境は大事。でも、きょうをどう生きるか」 強まる規制、悩む若者

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ロンドン=藤原学思
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 ベンツ、BMW、アウディ。駐車場には、25台ほどの中古車が並ぶ。人がすれ違うのもままならない。その奥の事務所で、中古車店を営むバックス・アワンさん(27)は客を待ち続ける。

 ほぼ毎日、午前9時から午後6時まで。休むのは月に2、3日ほどだ。

 店で主に扱うのは、2010年代後半製造の車だ。

 「計算をしてみようか」と彼は言い、電卓をたたき始めた。

 「12・5ポンド取られて、それが365日。1ポンドがいま187円だから、年間では85万円だ。国によっては快適に生きられる金額ではなかろうか」

 目を見開き、あきれたように笑う。

地球沸騰 若者はいま

世界の平均気温が史上最高を更新する今年は、「地球沸騰の時代」の始まりに過ぎません。影響は未来世代ほど重くのしかかります。戸惑い、立ち上がる若者の姿を伝えます。

古い車両で走行「1日2300円」

 彼が不満を抱いているのは、ロンドンで導入されている排ガス規制のための「超低排出ゾーン」(ULEZ)だ。

 ULEZは19年4月、ロンドン中心部に設けられた。その目的は「空気をきれいにして、公衆衛生に寄与し、気候変動対策に貢献する」(市の説明)というものだった。

 ゾーン内を車で通行する場合、ガソリン車なら05年、ディーゼル車なら15年の排ガス基準を満たさない車だと1日につき、12・5ポンド(約2300円)を払わなければならない。

 対象地域は2度拡大され、今年8月下旬にロンドン市内全域に広がった。市側は10月、走行が確認された対象車両が6月に比べて半減したと「成果」を誇った。

 英国は、世界の気候変動対策のリーダーシップをとってきた。2008年には世界に先駆けて、法的拘束力のある温室効果ガス削減目標を盛り込んだ気候変動対策法を制定した。主要7カ国(G7)で初めて2050年までのゼロエミッション達成を法制化したのは4年前のことだ。

 「フロントランナー」の打つ政策は野心的だ。ULEZもまた、世界有数の厳しい排ガス規制と言われている。

 アワンさんは「環境問題には…

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