米国のキッシンジャー元国務長官死去、100歳 沖縄返還交渉に関与
戦後の米国を代表する外交戦略家で、1970年代に歴史的な米中接近やベトナム和平を推進したヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が29日、米コネティカット州の自宅で死去した。100歳だった。キッシンジャー・アソシエーツ社が発表した。
ニクソン、フォード両大統領の下で大統領補佐官(国家安全保障担当)、国務長官を歴任。大国間の「力の均衡」による安定を重んじる現実主義の外交を展開した。中ソ対立を利用して冷戦の構図を塗り替えた米中接近はその真骨頂だった。
国交のなかった中国を極秘裏に訪れて周恩来首相と会談し、72年のニクソン訪中の準備を整えた。73年には、ベトナム和平協定を成立させ、ノーベル平和賞を受けた。
ソ連との間でも、弾道ミサイルの増強に歯止めをかける72年の第1次戦略兵器制限条約(SALT1)の締結など、緊張緩和(デタント)政策を推進した。
一方、ベトナム戦争期のカンボジアへの爆撃や、南米チリの社会主義政権転覆に関与。秘密外交を重ね、国益のためには手段を選ばない側面は批判を招いた。
日米関係では沖縄返還交渉に深く関わった。日本側密使だった若泉敬・京都産業大教授(当時)との間で、緊急時に沖縄への核兵器の再持ち込みと通過の権利を認める内容の秘密合意議事録(核密約)を作成した。「密約」は、69年11月に佐藤栄作首相が訪米した際、ニクソン大統領と署名した。
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