介護現場、働き始める人を離職が初めて上回る 担い手不足が危機的

有料記事

関根慎一
[PR]

 介護職から離職する人が働き始める人を上回る「離職超過」が昨年、初めて起きていたことが厚生労働省の調査でわかった。この傾向が続けば人手不足はいっそう深刻化する。高齢者数がほぼピークとなる2040年度までに介護職を69万人増やす必要があるとされるが、先行きは厳しい。

 厚労省の雇用動向調査によると、入職率から離職率を引いた「入職超過率」は22年に介護分野でマイナス1・6%に。マイナスは「離職超過」を意味する。慢性的な人手不足が続いてきた分野だが、離職超過となったのは今の方法で調査を始めた09年以来、初めて。

 厚労省の試算では、40年度には約280万人の介護職が必要になり、19年度比で新たに約69万人の確保が求められる。今後、介護サービスへの急速な需要の高まりが予想されるが、環境が整えられるかは見通せない。

 今年の春闘での30年ぶりの賃上げも介護業界を揺るがす。民間企業で3・58%という高水準の賃上げ率となった一方、介護事業所は1・42%にとどまった。賃上げの原資となる介護報酬の改定は3年に1度のため、物価高の動きに追いつかない。全産業平均との賃金格差は7万円近くだったが、さらに広がる見込みだ。

 政府はこうした状況への対応に迫られ、11月10日に閣議決定した今年度補正予算案に介護職らの賃金を月6千円相当引き上げる処遇改善策を盛り込んだ。来年度の介護報酬改定までの緊急措置との位置づけで、総額539億円。来年2月からの実施を目指す。「ここで止血しなければ取り返しがつかなくなる」(同省幹部)との判断だった。

 一方、介護現場からは月6千…

この記事は有料記事です。残り187文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【本日23:59まで!】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    木村裕明
    (朝日新聞記者=企業、経済、働き方)
    2023年12月3日23時35分 投稿
    【視点】

    衝撃的な調査結果です。  介護業界で国内最大の労働組合、日本介護クラフトユニオン(NCCU)の幹部がかねて「介護職員を増やさなければならないのに、むしろ他産業への人材流出が加速して、離職率が上がっている」「とにかく人が足りないと、悲鳴のよ

    …続きを読む