奏でる「歌詞自由」の歌 十日町市のインクルーシブ教育のカタチ

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藤原伸雄
【動画】奏でる「歌詞自由」の歌 新潟十日町のインクルーシブ教育のカタチ=藤原伸雄撮影

 国連の障害者権利委員会が昨秋、障害児を分離する現状の特別支援教育をやめるよう日本政府に勧告した。日本でも、障害がある子もない子も共に学ぶ「インクルーシブ教育」が広がりつつある。独自の方法でその教育を実践する現場を訪ねた。

 新潟県十日町市の市立十日町小学校と特別支援学校市立ふれあいの丘支援学校、発達支援センター「おひさま」では、「歌詞自由」というパートがある歌を作り、独自のインクルーシブ教育を進めている。

 2013年、十日町小の改築に合わせて、新設されたふれあいの丘支援学校と、おひさまが同じ敷地に建てられた。3施設は相互につながっている。十日町小の246人、ふれあいの丘支援学校の小中学生37人の児童生徒は顔を合わせるだけでなく、交流授業や調理実習や運動会などを通して交流を深めている。ときにはおひさまに通う子どもとのふれあいの場もある。

 3施設が一緒になる10周年に合わせて、「同じ校舎にいる子どもたちが全員で歌える歌を作りたい」という声が昨年、保護者や学校関係者から上がった。そこから、全児童生徒が歌える愛唱歌を制作するプロジェクトが走り出した。十日町小の関係者が、2021年の東京パラリンピック開閉会式のステージアドバイザーを務めた栗栖良依さんと知り合いだった縁もあり、東京パラ開会式の入場曲を作ったアーティストの蓮沼執太さんが作詞作曲を担当。その歌詞をもとに、児童生徒が歌の題名を「ゆめのおか」にしたという。

 特徴的なのが、1分30秒の歌の途中、約30秒間、歌詞自由のパートを作ったことだ。音楽に合わせて、自分の好きな表現をして良いパートにした。蓮沼さんは「子どものなかには、歌えない子もいる。自分たちで音楽を作るという、自由さが曲にあってもいい」と話す。「この歌が引き継がれていって、この土地の記憶になってもらえたらうれしい」。

 22年11月に行われた3施設周年記念式典では、蓮沼さんも参加し、一部の児童生徒らで「ゆめのおか」を合唱した。だが、新型コロナ禍で、なかなか全児童生徒で合唱する機会はなかった。そこで、23年1月には、「ゆめのおか」を後世に残したいと、十日町小の児童とふれあいの丘の児童生徒が、別々に録音してCDにした。

ついに実現した合唱

 新型コロナの規制も少なくなった今年10月14日、ついに「ゆめのおか」の全体合唱が実現した。毎年恒例のイベント「城ケ丘ふれあいフェスティバル」で4年ぶりに全児童生徒と保護者が集った。

 ピアノの音に合わせて、合唱がはじまった。

 「歌詞自由」のパートになる…

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