クマタカなど希少種にも影響か 川辺川ダム、試験湛水や工事騒音で

大貫聡子
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 熊本県川辺川への流水型ダム整備をめぐり、国土交通省は27日、環境影響評価法に基づく準備書に相当する「環境影響評価準備レポート」をまとめたと発表した。28日から公告・縦覧を始める。

 準備レポートは、工事の騒音などで希少種クマタカの繁殖成功率が低下したり、ダムに水をためて安全性を確認する試験湛水(たんすい)で流域にある洞窟「九折瀬(つづらせ)洞」の大部分が一定期間冠水することでコウモリや希少な昆虫などが生息できなくなったりする可能性を指摘した。

 その上で、低騒音・低振動の工法を採用することや冠水しない場所に生物を移すなどの環境保全措置により、影響は「実行可能な範囲内でできる限り回避、低減されている」と評価。「環境の保全についての配慮が適正になされる」と結論づけた。

 環境影響評価法は、大規模な事業が周辺環境に及ぼす影響を事前に調査するよう定めた法律で1999年に施行された。国は、川辺川ダムは「施行前から工事をしてきた」との理由で対象外としているが、県などの要望も踏まえて同等の手続きを進めている。専門家による「流水型ダム環境保全対策検討委員会」を設置し、検討を続けてきた。

 12月16日~21日に、ダム整備で一部が水没予定の五木村、ダム本体が整備予定の相良村など流域7市町村で説明会を開く。一般からの意見も募る。来年1月11日までに流域市町村長蒲島郁夫知事からも意見書の提出を受け、反映・修正の上で同法の評価書にあたるレポートにまとめる。

 川辺川へのダム建設計画は、蒲島知事が2008年に白紙撤回し、いったん中止となったが、20年の球磨川流域の豪雨災害を受けて方針を転換。22年8月、ダム整備を明記した「球磨川水系河川整備計画」が策定された。

 整備予定のダムは高さ107・5メートル、総貯水容量1億3000万トン。

 準備レポートは国交省川辺川砂防事務所のホームページ(http://www.qsr.mlit.go.jp/kawabe/index.html別ウインドウで開きます)。(大貫聡子)

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