新ホール見直しを正式発表 現行案を事実上白紙に、知事「全力注ぐ」

能登智彦

 徳島県の後藤田正純知事は24日、見直し方針を示してきた県立新ホールの建設場所を、現行の徳島市文化センター跡地周辺からJR徳島駅に近い藍場浜公園の一角に変更する案を正式に表明した。プロスポーツや音楽のイベントに使える大型のアリーナを駅北側に新設し、JRを一部高架化するなどの構想も併せて示した。具体的なコストやスケジュールは示さなかった。

 駅周辺の大規模な整備に踏み込んだ一連の構想は、新ホールの建設計画を事実上振り出しに戻すもので、今後は徳島市や県議会、県民の理解が得られるかどうかが焦点となりそうだ。

 新ホールを巡っては、飯泉嘉門前県政が徳島市と連携し、市役所近くの市文化センター跡地とその周辺に建設する計画をまとめ、2021年に基本協定を締結。約1900席の大ホールと約400席の小ホールで構成し、建設費は約200億円余りとされた。27年秋の完成を目指すとし、すでに用地の区画整備などが進んでいる。

 しかし、後藤田知事は今春の知事選で、多額のコストがかかる豪華な外観デザインなどを疑問視。飯泉氏らを破って知事に就任した後は、建設場所の変更も含めて検討を進めていた。

 この日、後藤田知事が表明した方針では、新ホールは予定地を藍場浜公園に変更し、1500席を下限とする大ホールのみを整備する。取りやめる小ホールについては、隣接する「あわぎんホール(県郷土文化会館)」(809席)を活用するという。

 一方、構想によると、徳島駅北側にあるJRの車両基地を新ホールの現行予定地に移転。車両基地跡地側に新たな改札口を設け、駅の南北の往来をしやすくする。鉄道も一部高架化する。徳島駅北側に広がる徳島中央公園や徳島城跡(国指定史跡)との往来を可能とすることで一帯のにぎわいを高めたい考えだ。

 ホテルなどを誘致するほか、「とくぎんトモニアリーナ(徳島市立体育館)」を移転して大型のアリーナの新設を検討する。飯泉前県政はアリーナ候補地として県立徳島東工業高校跡地(徳島市大和町)を挙げてきたため、両候補地を比較して決める。

 後藤田知事は24日の記者会見で「『県都』を活性化させるビジョンで、魅力的なものを示せたと思っている。県民全体にかかわる問題であり、任期中全精力を注ぎ、覚悟して取り組む」と述べた。(能登智彦)

     ◇

 徳島市の内藤佐和子市長は24日、「まだ県から正式にお話を伺っていないので、現時点ではコメントできることがない。今後の県議会などでの議論を注視していきたいと思う」とのコメントを出した。徳島市では来春、任期満了に伴う市長選が予定されている。知事の計画にどう向き合うかが市長選の争点に浮上する可能性がある。

     ◇

 JR四国は24日、「徳島県が公表したばかりであり、今後、具体的な議論がはじまると考えている。駅周辺のまちづくりは当社も必要と考えており、県の検討には協力したい」とのコメントを出した。

     ◇

 飯泉前県政で県市協調未来創造検討会議(新ホール部会)のメンバーだった四国大学・松重和美学長の話 知事の案は全体として悪くはない。ホールの建設場所の藍場浜公園の一角は阿波踊りの演舞場のそばで、夏には一帯を効果的に活用するなどプランが広がるからだ。徳島駅の北側を含む街づくりも長年の懸案だっただけに期待感はある。

 だが、全体の実現は簡単ではない。巨額のコストは言うまでもなく、駅北側の開発は埋蔵文化財が出てくる可能性もある。県市で合意している現計画の調整も必要だ。枠組みが大きいだけに、新ホールについては現計画より完成時期の遅れも予想される。若者らにとって、コンサートなどで「生の感動」を得られる時期が遠ざかる。

 新ホールは座席数にも議論が集まってきた。だが最新のデジタル音響設備や世界同時発信をも可能にする機能の導入といった、座席数にとらわれない新時代の発想や展開が求められている。(能登智彦)

知事が示した構想の骨子

○1500席を下限に県立新ホールを藍場浜公園に。小ホールはあわぎんホールを活用

○新ホールの現行予定地にJR車両基地を移転

○車両基地移転後の駅北側に新たな改札口を設け、周辺を高架化

○駅北側に大規模アリーナの整備を検討

○コスト・スケジュールは今後具体化する…

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません