「女性ならではの感性」の雑さ 褒めているようで、見下しているもの
岸田文雄首相が女性大臣の任命に際し、使った「女性ならではの感性」という言葉。時代錯誤的だと批判を集めましたが、作家の松田青子さんは、この言葉が「悪目立ち」してしまう社会に目を向けます。
悪気なく、無意識で使われる「女性ならでは」
「男性ならではの感性」という短い作品を2016年に発表しました。
その頃、エッセーやインタビューなどの依頼文で、「女性ならではの意見をぜひお聞かせください」「女性ならではの感性で」といったフレーズが書かれていたことが何度かあり、そういったメールが届くたびに違和感が深まりました。私は日常の中でいくつか同じような出来事が重なると、一つの事象として考える癖があります。なので当時、なぜこういったフレーズが枕詞(まくらことば)のように使われているのだろうと考えたのです。
言葉は枕詞として使われると、人を思考停止させてしまうところがあります。「女性ならではの感性で」と私に依頼した方々も悪気なく、無意識で使っている印象がありました。女性が言われがちな言説をすべて男性に言い換えてみたら、そのおかしさが伝わるのでは。そう思って、書いた作品でした。
身体の違いによる経験の違い、それによる「女性ならでは」のものが、ないわけではないと思います。
首相が理解していない、単純な事実
ジェンダー平等を成し遂げて…