「女性ならではの感性」の雑さ 褒めているようで、見下しているもの

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聞き手・高重治香

 岸田文雄首相が女性大臣の任命に際し、使った「女性ならではの感性」という言葉。時代錯誤的だと批判を集めましたが、作家の松田青子さんは、この言葉が「悪目立ち」してしまう社会に目を向けます。

悪気なく、無意識で使われる「女性ならでは」

 「男性ならではの感性」という短い作品を2016年に発表しました。

 その頃、エッセーやインタビューなどの依頼文で、「女性ならではの意見をぜひお聞かせください」「女性ならではの感性で」といったフレーズが書かれていたことが何度かあり、そういったメールが届くたびに違和感が深まりました。私は日常の中でいくつか同じような出来事が重なると、一つの事象として考える癖があります。なので当時、なぜこういったフレーズが枕詞(まくらことば)のように使われているのだろうと考えたのです。

 言葉は枕詞として使われると、人を思考停止させてしまうところがあります。「女性ならではの感性で」と私に依頼した方々も悪気なく、無意識で使っている印象がありました。女性が言われがちな言説をすべて男性に言い換えてみたら、そのおかしさが伝わるのでは。そう思って、書いた作品でした。

 身体の違いによる経験の違い、それによる「女性ならでは」のものが、ないわけではないと思います。

首相が理解していない、単純な事実

 ジェンダー平等を成し遂げて…

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この記事を書いた人
高重治香
論説委員
専門・関心分野
ジェンダー、文化
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    増田ユリヤ
    (ジャーナリスト)
    2023年11月30日7時30分 投稿
    【視点】

    女性ならではの、主婦の目線で、母親として、などなど、意見を求められるときに枕詞のようにして使われてきたフレーズ。私自身、ずっと違和感をもってきたし、こうした枕詞をつかってコメントを求められたときに、ついムッとして「主婦の目線、って何ですか?

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    インベカヲリ★
    (写真家・ノンフィクションライター)
    2023年11月30日7時30分 投稿
    【視点】

    私の場合、著書を読んだり作品を見た人から、「作者は男性かと思った」と言われることが多い。だから、「女性ならではの感性」などというのは幻想だといつも感じる。 同じように、仕事を見て「女性だからやりやすいのでは?」というような質問を受けることも

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