東電「不適格」 原発事故の三つの検証、元委員長の池内氏が独自報告
東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働をめぐり、県が取り組んだ福島第一原発事故に関する「三つの検証」について、検証を総括する責任者だった池内了・名古屋大名誉教授が独自に報告書をまとめ、22日発表した。検証の問題点などを列挙したほか、テロ対策の不備など問題が相次いでいることに触れ、東電を事業者として「不適格」と断じた。
三つの検証は技術、避難両委員会と、健康・生活委員会の二つの分科会がそれぞれ計四つの報告書を作成し、検証総括委員会がそれらを総括する形で進められた。同委員長だった池内氏は県との意見の食い違いから、他の委員とともに3月末の任期で再任されず、代わりに県が9月に総括報告書を取りまとめた。
池内氏はこの日発表した報告書で、作成の理由について「解任された今でも総括を行う意志を持ち続けている」とした。自身を「原発批判派」とも記した。
続いて各委員会・分科会の報告書に対し、問題点やさらなる調査が必要と考える点などを挙げた。
避難委の報告書で示された「事故時の自治体・住民への情報伝達」「高齢者・障害者の避難」など456の論点について、「重要度や緊急度を抜きに並列的に示されている」とし、「どれだけの人が読み、実際の避難行動の策定に生かすことになるのか」と批判。大雪時の避難の難しさにも言及し、「冬季3カ月の間は稼働させないというような案を検討してもよかったのではないか」とした。
さらに、福島第一原発事故を起こした東電に原発を動かす適格性があるかについても検討。繰り返される問題から隠蔽(いんぺい)体質がみられるとして、「無責任な技術者集団に原発の運転を任せられるだろうか」と疑問を呈し、「どう見ても不適格」と指摘した。このほか農水産物の風評被害なども取り上げた。
県庁で記者会見をした池内氏は報告書について「県民一人ひとりが自分の問題として原発を考えるきっかけに使ってほしい」と述べた。
報告書の概要
【技術委員会】
・重要設備の損傷の原因が地震の揺れか津波か両論併記。こうした課題について具体的な対策が施されているか検討していない
【避難委員会】
・健康、生活両分科会と合同で避難と生活及び健康の維持について検討すべきだった
・被曝(ひばく)がない避難が可能なのかや、被曝を最小限にする避難行動などについて議論する場が必要だった
【健康分科会】
・甲状腺がんが事故と無関係と決めつけず、地道な検証作業を続けたことを評価したい
・メンタルヘルスに関わる議論が不十分
【風評被害】
・穀倉地帯である新潟で放射能汚染が起きれば、食の安全に対する強い不安感が呼び起こされ、市場評価が大きく下落することは確実…