障害者グループホーム、愛知県内の2割近くで食材費流用 県調査

松島研人 三宅梨紗子
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 愛知県や首都圏を中心に障害者向けグループホーム(GH)を全国展開する大手運営会社「恵(めぐみ)」(本社・東京都)が障害者から食材費を過大徴収していた問題を受け、愛知県は22日、県内のGHのうち2割近くの139事業所で食材費の人件費などへの流用が確認されたとする調査結果を発表した。障害者虐待防止法が定める経済的虐待(事業者の不当利得)に当たるかなどを今後調べる。

 厚生労働省令はGHの食材費について、利用者からは実費のみを徴収するよう定めている。

 愛知県の監査では、「恵」の法人本部が各GHの利用者から食材費を定額で一括徴収後、各GHに分配する仕組みがあったことが判明した。だが分配金額は定額徴収額の3分の1程度だったため、厚労省や愛知県などが経済的虐待の疑いがあるとして流用状況などを調べている。

 これを受けて県は9月、767ある県内すべての障害者向けGHの調査を始めた。食材費が適切に使われているかなどを尋ねる調査表を送付し、11月17日現在で707事業所から回答があった。

 調査によると、利用者から徴収した食材費と実際に食材費に充てた金額について「精算していない」と回答したのは391事業所。そのうち40事業所が「職員の人件費に流用」と回答した。「光熱費や日用品費に流用した」と回答したのは99事業所。そのほかは「預かり金として保管・留保」などだった。

 県によると、人件費は利用者から徴収することは認められておらず、過大徴収分は利用者への返還を求める。光熱水費などへの流用については利用者の同意がなければ不適切だとして、今後も調査を進めるという。期限内に提出しなかった60事業所や調査表に不備のあった事業所については、聞き取りや立ち入り調査を行う方針。

 調査結果を記者会見で発表した大村秀章知事は「福祉サービス事業は性善説で成り立っており、制度を悪用しているところは許せない。しっかり是正させる」と話した。

 朝日新聞の取材では、愛知県外の「恵」運営のGHでも、神奈川県群馬県で同様の仕組みによる過大徴収が確認されている。愛知、滋賀、京都の3府県で同社のGHの新規開所が相次いで中止になるなど、利用者の不安は増している。

 こうした状況を受けて愛知県は、県内の自治体と連携して利用者の支援を行う連絡協議会を設置する。同社のGHから別のGHに移る必要が生じた場合にあっせんや調整を行うという。

 「恵」の食材費の過大徴収問題については厚労省が10月、食材費や光熱水費などの徴収額を個別に記録し、外部からチェックできる仕組みを検討する方針を明らかにした。(松島研人、三宅梨紗子)

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