「有害な男らしさ」が招く父親の「産後うつ」とは 産婦人科医の危惧

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聞き手・武田耕太

 男性向けの新しい育児休業制度「産後パパ育休(出生時育児休業)」が昨年10月に始まるなど、政府は父親の育児を促している。だが、産婦人科医・産業医で「ポストイクメンの男性育児」(中公新書ラクレ)の著書がある平野翔大さんは「決定的に欠けている視点がある」と言い、父親の「産後うつ」が今後、大きな問題になりうると指摘する。どういうことなのか。

 ――父親の「産後うつ」への対策の重要性を著書のなかで指摘されています。なぜ、重要なのですか。

 産婦人科医・産業医として、多くの父親と接するなかで、育児をきっかけにメンタルの不調を起こす人を多く診るようになりました。

 子どもが生まれた後も労働時間が減らせないなか、父親になり、「仕事も育児も頑張らないと」と自分を追い込み、崩れていく人は少なくありません。

 育児は助け合いながらやるべきものですが、「父親は大黒柱であるべきだ」「失敗している姿を見せるのは恥だ」と思い込んでいる人もいます。「有害な男らしさ」と言われますが、結果として、不調を感じても周囲に支援を求めず、適切な支援や医療につながっていないケースは多くあります。

 政府は男性の育児参加を呼びかけ、男性の育児休業取得率は、2022年度に約17%と、まだ十分とは言えませんが、それでも前年度に比べて約3ポイント増えました。

 今後も増えていくとみられますが、「産後うつ」の父親も同時に顕在化していくとみています。

 ――男性の育児を考えるとき、欠けている視点とは何でしょうか。

 男性も育児を担うべきだとい…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年11月27日14時40分 投稿
    【視点】

    「支援するべき存在」のいつもと違う変化に周囲が気づき、適切な支援ができる環境づくりのためには、職場であれば、その重要性についての意識をその職場の管理職の人(上司)が持っているかどうかが決定的だ。不調を感じても周囲に支援を求めず、適切な支援や

    …続きを読む