「エホバが絶対」恋愛もクリスマスも禁止 2世信者が受けた「洗脳」

有料記事

小川尭洋

 プレゼントを交換したり、ビンゴゲームをしたり、歌を歌ったり――。

 20年ほど前のこと。小学1年生だった男性は、教室の隅からクラスメートの様子を見つめていた。

 「なぜ、ぼく一人だけ……」

 ただ時が早く過ぎることを祈った。

 その日は年に1度のクリスマス会。参加しないよう勧めたのは、母だった。年間予定表で会が開かれることを知っていた。

 「それは私たちの神様のイベントじゃない。参加したら、神様が悲しむわ」

 男性は担任に「違う神様なので、クリスマス会には参加しません」と伝えた。

 クリスマス会が終わった後、つらかった気持ちを明かすと、母は言った。「そういう気持ち、神様も分かっているよ。いつか報われるから大丈夫」

 「教義」を守る苦しみを乗り越えてこそ、幸せになれるという考えだった。

 母が信仰しているのは「エホバの証人」(ものみの塔聖書冊子協会)。聖書の内容を信条とする「キリスト教系」の宗教団体で、エホバを唯一神としてあがめている。

 男性の家では、この教団の教えが絶対だった。

 安倍晋三元首相が銃撃されて亡くなった事件を受け、浮き彫りになった「宗教2世」問題。親の宗教活動によって子どもの人生も左右されます。「エホバの証人」を信仰する母のもとで育った、岩手県出身の20代後半の男性が、過去の経験を証言しました。

 母は結婚直後、知人に誘われ20代で入信した。父は入信せず、母の信仰熱は少年とその妹に向けられた。信者のエリートになるべく、教義を厳しく教え込まれた。

 休むことを強いられたのは…

この記事は有料記事です。残り2860文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
小川尭洋
デジタル企画報道部
専門・関心分野
人種差別、海外ルーツの人々、歴史認識、政治と教育