親の就労問わず乳幼児預かりOK 育児負担減へ三陸沿岸で新たな動き

東野真和

 乳幼児や学童を預かり、保護者の育児負担を軽減する新しい仕組みや施設が、岩手県釜石市と大槌町で動き出した。東日本大震災での被災に伴い、少子化や未就園児への対応など、全国的な課題の「先進地」といわれる三陸沿岸で、解決策を模索する官民の試みだ。

 釜石市の保育所「ピッコロ子ども倶楽部桜木園」は9月から、保護者が働いていなくても乳幼児を定期的に預けられる、国の「こども誰でも通園制度」のモデル事業を始めた。0~3歳児の男女5人を受け入れ、それぞれ週2回ほど預かる。

 モデル事業を始めたのは、県内では盛岡市立とりょう保育園とここだけだ。

 子ども家庭庁の推計では、0~2歳児の約6割(認可外保育所などの利用者を含む)が未就園児だ。

 現行制度では、原則として親の就労など保育が必要と認定されないと、保育所や認定こども園などを利用できない。「誰でも通園」ができると、育児で孤立したり、親世代などの介護で忙殺されたりしている保護者が気軽に預けられる。

 千葉正子園長(65)は、「適切な育児のためには我々の力が必要な家庭が多いと感じる」と言い、「誰でも通園」の意義を説く。ただ、課題も感じており、「誰でも通園の子どもたちは、毎日通っている子たちとすぐはなじまない。まず、誰でも通園の子が一定期間過ごす部屋の整備を、制度の中に位置づけてほしい」と話す。

 モデル事業を開始するにあたっては、希望者が多く、受け入れ体制の状況から、断らざるを得なかった乳幼児もいた。市は潜在的な市民ニーズはあり、少子化で定員割れする施設側の経営にもプラスになるとして、受け入れる施設を増やしていきたいという。施設に対しては、年間上限5万円を補助していく。

 隣の大槌町では「子どもの居場所」づくりが進む。

 社会福祉法人「堤福祉会」が、経営するこども園の敷地内に「つつみterrace(テラス)」を建てることになり、10月12日、上棟式があった。来年2月にオープンする予定で、約20人の子どもを受け入れる。スタッフ2人が常駐し、1階は食堂や遊び場などに、2階は学習スペースになる。

 建設費や運営費を日本財団(東京)が助成する。同財団は、家でも学校でもない「第三の居場所」としての活用を望んでいる。共働き世帯の子どもらに、学校や家庭以外の学習場所や遊び場などを提供するもので、単なる学童保育とは違い、特に貧困や障害などの困難を抱えている子どもらを、食事の提供や学習指導なども含め手厚く支援していく施設になる。

 運営する堤福祉会の芳賀潤理事長(58)は「東日本大震災から12年半を経て、地域のつながりが薄れている」として、地域で子どもを見守る場だけでなく、子育て世代やお年寄りをつなぐ拠点にしたいと話した。

 同財団が助成してできる施設は県内では初めて。全国にある約180カ所の同様の施設との交流も企画したいという。(東野真和)…

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