製作期間は3年以上 鉄道模型の職人が0.1ミリまでこだわる理由
小高い丘にある横浜市神奈川区の住宅街の一軒に、変わった看板がかけられている。
「稲見鉄道模型製作所」
全国から発注を受ける、鉄道模型ファン御用達の製作所だ。オーダーメイドの鉄道模型の製作から、模型の修理・改良、部品の販売までを手がけている。
中に入ると工作機械や、ショーケースに飾られた鉄道模型が並んでいる。昔の鉄道の写真や看板などであふれ、秘密基地のようで心が躍った。
「ここが作業場です。私一人でやっています」
作業服を着た稲見行雄さん(72)が笑顔で迎え入れてくれた。
小学生の頃から父の仕事を手伝い
1946年に鉄道マニアだった父・武夫さんが開業。当初はアメリカを中心とした海外への輸出の下請けをしてきた。行雄さんは小学生の頃から兄弟と手伝いを始め、25歳のころから働いている。現在は2代目。
この製作所の特徴は、一般的な鉄道模型よりも少し大きい、45分の1サイズの鉄道模型を製作していることだ。アメリカでは主流だが、国内では珍しいサイズだ。開業してから同じサイズの模型を作り続けているという。
行雄さんのこだわりは、たった一つ。「いかに本物の鉄道車両に近い模型を作れるか」だ。
縮尺通りに45分の1の図面を引いてつくっても、バランスが悪くなってしまう。ただ部品を組み立てるのではなく、「本物のように見えるよう、ときには0・1ミリ単位で直すんです」。
限りなく細かい作業。そこまで細部にこだわるのは理由がある。
退職金を手にした男性からの製作依頼
「集団就職で上野駅に来たと…
【春トク】締め切り迫る!記事が読み放題!スタンダードコース2カ月間月額100円!詳しくはこちら