「宮本から君へ」助成金不交付、最高裁が取り消し 表現の自由を尊重

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遠藤隆史
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 出演者が麻薬取締法違反罪で有罪となった映画「宮本から君へ」をめぐり、製作会社「スターサンズ」(東京)が日本芸術文化振興会(芸文振)を相手に、助成金の不交付決定の取り消しを求めた訴訟の上告審で、最高裁第二小法廷(尾島明裁判長)は17日、決定を取り消す判決を言い渡した。不交付を妥当とした二審・東京高裁判決を破棄し、製作会社側の逆転勝訴が確定した。

 裁判官4人全員一致の判断。最高裁は「抽象的な公益を理由とする不交付が広がれば表現行為が萎縮する可能性があり、憲法21条が保障する表現の自由の趣旨に照らしても看過しがたい」と述べた。

 芸文振は文化庁が所管する独立行政法人。「宮本から君へ」に1千万円の助成金交付を内定していたが、2019年7月、出演者の有罪判決を理由に「公益性の観点から適当ではない」として一転、不交付を決めた。

薬物に寛容とのメッセージ…「想定しがたい」

 最高裁は、交付の判断には芸…

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    江川紹子
    (ジャーナリスト・神奈川大学特任教授)
    2023年11月17日21時40分 投稿
    【視点】

    私にとっては、どこがいいのかよく分からない映画だったが、もっと分からないのは、助成金が「国は薬物犯罪に寛容である」というメッセージとなり、薬物を使う人が増えかねない、との芸文振の主張だった。  違法薬物に対する国の姿勢を示すのは、もっぱら

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    天野千尋
    (映画監督・脚本家)
    2023年11月17日22時52分 投稿
    【視点】

    表現の自由を尊重する逆転勝訴、本当によかったです。 判決では「表現行為が萎縮する可能性」に触れられていますが、もし仮に逆の結果となっていたら、表現活動での内容的な萎縮やお上への忖度が心配されることに加え、近年ただでさえ俳優の不祥事によってお

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