「起爆剤にしたい」新幹線新駅で企業呼び込み、本社機能移転の会社も

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長屋護

北陸新幹線が生み出す活力②

 「起爆剤にしたい」

 6日夕、福井県越前市役所の市長応接室。大手電子部品メーカー村田製作所(京都)の子会社「福井村田製作所」(福井県越前市)の野村慎治社長が、来春開業する北陸新幹線の新駅「越前たけふ」の駅前に、研究開発拠点を新設すると報告。山田賢一市長は相好を崩し、こう答えた。

 越前たけふ駅は、市役所やJR北陸線武生駅がある中心市街地から約3キロ離れた郊外に位置する。一方、北陸自動車道の武生インターチェンジがすぐ近くにあり、国道8号も近いが、周囲は、そば畑や田んぼが広がる。

Uターンにも期待

 そこで市は、越前たけふ駅前の約100ヘクタールについて、地権者の理解を得ながら、広域交流の起点となる街づくりに取り組む構想を2003年に策定。15年の基本計画では、まず、道の駅を隣接させることにした。

 20年3月の計画では構想を明確化。五つのゾーンに分け、その一つに先端産業の誘致が盛り込まれた。構想から20年。道の駅は今年3月にオープンし、駅前の街づくりが本格的にスタートした。

 村田製作所は電気自動車やスマホなどに使われる積層セラミックコンデンサーの世界シェア1位。100%出資子会社の福井村田はその製造拠点の一つで、従業員5512人が働く。

 新たな研究開発拠点の投資額は約350億円で、26年4月の事業開始時の従業員数は約400人。将来は約800人まで増やす。

多様な働く場所創出へ

 野村社長によると、コンデンサーの研究は学生の関心が高いといい、「UターンやIターンにつながる」と話す。山田市長も「人口減少に若者の流出も重なるなか、多様な働く場所ができる」と期待を示した。

 800人が集う拠点となれば、取引先が出張で訪れる機会も増える。市産業政策課の担当者は「ホテルや飲食店も集積する好循環になる」と新駅を核とした街づくりに手応えを感じている。

本社機能移転の動きも

 北陸新幹線の新駅の開業直後、企業が本社機能の一部を移転し、地域活性化につながったケースもある。

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