まず目指すは避難目標地点 3・11「その時そして」命を守る(中)
小幡淳一
岩手県内各地に大きな被害をもたらす恐れがあるとされる日本海溝・千島海溝地震。その「備え」を進めなくてはいけない。
死者数は冬の午後6時に発生した場合、最大7100人に上るとされる。3万1千棟が全壊し、発生翌日には避難者は5万4千人に達する。死者は県内の沿岸12市町村すべてで発生し、自治体別では特に久慈市は4400人で最も多く、宮古市2100人、釜石市220人と続く。
いかに被害を減らすか。発生後にすぐ避難する人の割合が高まれば大幅に減る。そのためには避難意識を向上させ、一人ひとりが浸水想定区域外や安全な場所へ逃げるように心がける必要がある。
「あそこのビルを避難場所に使えたらいいんだけど……」
久慈市長内町にある東広美町内会長の晴山良一さん(70)はぽつりと言った。
予想される大地震では、市役所も消防本部も水没の恐れがある岩手県久慈市。東日本大震災より津波は15分程早く到達し、浸水域は3・6倍にもなる可能性が指摘される。新たに策定した津波避難計画ではまず目指す場所を設定した。犠牲者をなくすために何が必要なのか――。
町内には約220世帯が暮ら…