鶏舎に入ると、鶏たちが足元に駆け寄ってきます。「驚くでしょう。おびえることもなく、むしろ人に興味を持って寄ってくるんです」。「ナチュラファーム」(埼玉県寄居町)社長の一柳憲隆(いちやなぎのりたか)さん(51)がそう案内してくれている間にも、鶏たちは次々に寄り集まってきました――。
畜産動物のアニマルウェルフェア(動物福祉)を向上させようという潮流は、世界的に大きなうねりとなっています。日本は流れに取り残されつつありますが、アニマルウェルフェアに配慮した畜産の兆しは見えつつあります。採卵鶏をケージから解放する、平飼い養鶏は日本でも広まるのでしょうか。現場を取材しました。
現場へ! 鶏たちの「福祉」はいま③
ナチュラファームが2006年、アジアで初めて導入した「エイビアリー」と呼ばれる立体型の平飼い鶏舎。一柳さんに導かれてその中に入り、ふと気付くと、鶏に囲まれていた。ツンツンと、私がはいた長靴をつつきだす鶏もいる。横幅18メートル、奥行き80メートルという、一般的な体育館を2棟つなげたくらいの大きな空間を、1万数千羽の鶏が自由に動き回っている。
休息できる止まり木や、新鮮な水とエサが自動で供給される設備などが備えられたエリアは3層構造になっている。見上げるような高さから時折、鶏がぱたぱた羽ばたきながら降りてくる。
床面の運動場にはもみ殻が敷いてある。そこで鶏たちは駆けたり、砂浴びをしたり。鳥インフルエンザの心配をしなくて済む春から夏にかけて、昼間は屋外運動場にも自由に出られる。
エイビアリーの鶏「これほど穏やかに過ごすのか」
朝、卵を産む際には、巣箱が…
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