主人公は現役最古の飛行塔 武骨な姿に圧倒されて児童小説が生まれた
世の中の移り変わりを見続けてきた塔が思うものは――。現役で国内最古を誇る生駒山上遊園地(奈良県生駒市)の飛行塔が主人公の小説「100年見つめてきました」を、神奈川県在住の作家吉野万理子さん(53)が出版した。偶然、塔の存在を知ったのをきっかけに、戦争をはさんで、人間や動物たちと心を通わせる塔の1世紀近くにわたる物語を描いた。作品に流れるのは、世代を超えてつながる命への賛歌だ。
物語は1929(昭和4)年の遊園地開業に伴い建設された飛行塔の「わたし」が半生を振り返る形で進む。開業当時、大阪湾から奈良盆地までを見下ろしながら回転する飛行塔はたちまち、子どもたちの人気者となった。
自ら移動できない飛行塔に広い世の中のことを教えてくれたのは、先に開業したケーブルカーや、止まり木代わりにやってきたカラスやトンビ、チョウやタヌキたち。「わたし」は生駒以外にも遊園地や飛行塔があることを知り、あいさつの伝言を鳥たちに託す。
その後、開園前の夜明けにこっそり遊園地を訪れた貧しい農家の少年をゴンドラの飛行機に乗せたことから、塔と少年との間に長きにわたる友情がはぐくまれる。
戦火の跡 街を見下ろしながら
大陸で始まった戦争の足音は…
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