第5回「黙秘」は市民にマイナスか? 弁護士が立ち会いの実現をめざす理由

有料記事聖域 取り調べの弁護士立ち会い

聞き手・阿部峻介

 なぜ取り調べに弁護士が立ち会う必要があるのか。日本弁護士連合会の「取調べ立会い実現委員長」を務める川上有弁護士(65)=札幌弁護士会=は、「とりもなおさず供述の自由がないからだ」と言い、各地の弁護士に立ち会いを実践するよう訴えて回る。

――立ち会いに法的根拠はあるのですか

 刑事訴訟法には何も書いていません。立ち会っていいとも、ダメだとも。

 でも取り調べは弁護士の助力を最も必要とする局面で、憲法は黙秘権や弁護人依頼権を保障しています。立ち会いはこれらを実質的に保障するものです。

 それに、犯罪捜査規範(警察の内規)には、「弁護人を立ち会わせたときは~」と立ち会いを想定した条文もあります。現行法上も立ち会いは認められると考えています。

 ――弁護人がいなければ、黙秘はできませんか

 簡単にはできません。「黙秘する」と言っても、取り調べは終わらないからです。

記事の後段では、警察官が「泥棒に黙秘権があるか」と言い、7時間にわたって自白を迫る音声動画を紹介しています。

 たとえば、取調官は「こっちは証拠を全部見てんだ。突然起訴されて困るのは何も言い分を言わないお前だろ」と揺さぶったり、「じゃあおふくろさんに聞くしかねえな」と脅したりする。

 あるいは「(プロ野球の)ファイターズ最近調子いいな」とか、「あそこのラーメンうまいらしいぞ」とか言って関心を引く。つい「僕はラーメンならこっちですね」と乗ってしまうと、会話が始まります。5分ほど盛り上がったところで、「あの日どこに行ったかぐらい言ってよ」となります。そこでまた「黙秘」と言うのは、人間だからしんどいのです。

 ――取り調べに応じることにどんな問題があるのでしょうか

「弱らせろ」 かつて流出した警察の文書

 分かってほしいのは、供述調書は、インタビューした内容をまとめたものでは決してないということです。

 警察は逮捕というハードルを…

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