第3回「日弁連が取り調べ拒絶を志向している」 警察に広がる注意喚起

有料記事聖域 取り調べの弁護士立ち会い

阿部峻介

 取調室に弁護士が同席する。海外ドラマでは珍しくない光景を、日本でも当たり前に――。そう考え、立ち会いの実績を重ねてきた弁護士たちが異変を感じるのは、ここ2年ほどのことだ。

 逮捕されていない「在宅」の取り調べでも、警察は立ち会いを認めようとしない。

 取調室のすぐ外で待って頻繁に助言する「準立ち会い」をしようとすると、「庁舎管理権」を根拠に離れるよう促される。

 そんな経験をした弁護士が各地で相次いだ。

異変の背景に、1枚の文書

 2018年末に在宅の事件で立ち会いを経験した片山和成(かずなり)弁護士(大阪弁護士会)は、「どんな事件でも立ち会いを申し入れているが、あのとき以来、完全な立ち会いは実現していない」と話す。

 弁護士たちが背景にあるとみるのが、警察庁が21年5月に全国の都道府県警察に出した、1枚の文書だ。

 「指導連絡」と題するA4サイズの紙には、こう書かれている。

 「取調べは事案の真相を解明して証拠資料を収集するという捜査の一環であり、重要な役割を果たしている」

 「弁護人の立会いについては慎重に検討する必要がある」

 ポイントは次の一文だ。

 「申出等があった場合には、警察署独自で判断させることなく、警察本部への報告を求め、組織的に対応するよう徹底されたい」

 立ち会いの可否に対する判断が「組織的な問題」に格上げされたことで、「安易な受け入れ」は淘汰(とうた)されていった。弁護士たちはそうとらえた。

「おいこれ署名するか」「すんのかせんのか、こらぁ」。7時間を超す取り調べで響く警察官の怒声。記事の後半では、「違法な取り調べ」と裁判で認定された音声動画を紹介します。

 伏線があった。

「立ち会い宣言」 全事件で申し入れ

 日本弁護士連合会ではこの少…

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