東北清酒鑑評会、福島の銘柄が純米酒の部で3年連続の最優秀賞

岡本進
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 今年の東北清酒鑑評会の純米酒の部で、松崎酒造(福島県天栄村)の「廣戸川(ひろとがわ)」が最優秀賞に選ばれるなど上位3酒を県内の酒蔵が独占した。5月の全国新酒鑑評会で県勢は金賞受賞数の10連覇を逃したが、この部門では3年連続で最優秀賞の受賞となった。

 独立行政法人酒類総合研究所日本酒造組合中央会が共催する全国新酒鑑評会は順位をつけないが、仙台国税局主催の東北清酒鑑評会は優等賞の中からナンバーワンと次点二つの上位3酒を選ぶ。審査結果が10日に発表された。次点の評価員特別賞は曙(あけぼの)酒造(会津坂下町)の「絆舞(きずなまい) 佳酔(かすい)」と東日本酒造協業組合(二本松市)の「奥の松」が受賞した。純米酒の部は昨年も最優秀賞に稲川酒造店(猪苗代町)の「七重郎(しちじゅうろう)」、一昨年は国権酒造(南会津町)の「國権(こっけん)」が選ばれている。

 今年は東北6県の148の清酒製造場から純米酒の部に134点、吟醸酒の部に143点が出品された。各県の醸造試験場などの専門家が点数をつけて審査し、吟醸酒の部の最優秀賞は「高清水(たかしみず)」(秋田市)だった。

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 廣戸川を造る松崎祐行(ひろゆき)さん(38)は国内の若手杜氏(とうじ)の注目株だ。東京で催されている国内最大級の品評会で2014年にベテラン杜氏らを抑えて1位となり、一躍脚光を浴びた。全国新酒鑑評会も昨年まで10年続けて金賞を受賞。5月に広島で開かれたG7サミットでは、首相夫妻主催の夕食会で広島の日本酒とともに振る舞われた。

 日本酒造りの適期は、低温発酵できる冬だ。春の全国新酒鑑評会には新酒が出品されるが、秋の東北清酒鑑評会は新酒を貯蔵庫で半年ほど保存した熟成酒が対象になる。今回の鑑評会では「ほどよい酸味とすっきりとした味わいで、後味はすっと切れる。香味のバランスが素晴らしい」と評価された。

 特別な酒米と華やかな香りを伴う酵母で出品酒を造る蔵元が大半のなか、松崎さんはどの鑑評会の酒も、市販酒と同じ県産の酒米と、県が開発した香りが控えめな酵母で仕込んでいる。「軟質で旨(うま)みまで溶けやすい酒米のため、秋までの保存だと味がもたないと思っていたが、いい具合に熟成が落ち着いてくれた。酒瓶を保存中も、空気の流れを極力受けずに静かな環境を保とうと、貯蔵場所を大型の冷蔵庫に変えたのもよかったのかもしれない」と松崎さんは話す。

 評価員特別賞に選ばれた絆舞も、松崎さんと同世代の若手が造り手だ。東日本大震災時の各地からの支援に感謝しようと、47都道府県の米を混ぜて仕込んでいる。そうした独特な造り方での酒も入賞したことで、県内の酒蔵の技術力の高さが改めて評価されたかたちだ。(岡本進)

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