毎朝練習1時間、ピアノ歴35年 ソロコンサートの夢かなえた65歳

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棟形祐水
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 吹奏楽や合唱の大会が開かれる文化ホール。700人が収容できるこの会場で、篠原稔さん(65)はベートーベンのソナタ第8番「悲愴(ひそう)」をピアノで弾ききった。

 この日はアンコールを含めて7曲を披露。演奏が止まることもあったが、途中でジャケットを脱ぐほどの熱演を披露した。

 「下手くそだけど、35年間この日を夢見て練習してきました」。締めのあいさつで頭を下げると、客席から大きな拍手が起こった。

きっかけは長女の習い事 見ているうちに弾きたくなった

 篠原さんは甲府市内で電気工事会社を営む。趣味は中学で始めたテニスに加え、スキーやスケート、バイクのツーリング。アウトドア派だ。

 そんな中、ピアノを毎朝1時間こつこつ練習してきた。夜遅くまで仕事をする忙しい時期を除き、午前5時に起き、眠い目をこすりながら5時半から練習を始める。楽譜には「ゆっくり」「指づかい」とメモがびっしり書かれている。

 ピアノとの出会いは30歳の時。当時3歳だった長女の習い事を考え、市内のピアノ教室に通わせた。レッスンは1回30分。短いので教室で待っていると、自分も娘と一緒に弾きたくなった。

 まず楽譜の読み方を覚えることから始め、5年目で初めて教室の発表会に出ることができた。「頭が真っ白で、うまく弾けなくて」。ほろにがいデビューだった。

 発表会に毎年出るようになると、それまで使っていたアップライトピアノを卒業し、念願のグランドピアノを購入。100万円の買い物だったが、同い年の妻に相談すると「毎日熱心に練習しているから」と承諾され、ほっとした。

 長女は中学でピアノをやめた…

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    金子元希
    (朝日新聞ネットワーク報道本部次長)
    2023年11月30日17時53分 投稿
    【視点】

    何歳になっても夢は持ち続けたいものです。 そして、30年にわたり抱き続けた夢がかなったと聞いて、長年の努力に敬意を払うとともに、うらやましい気持ちになります。 多くの地元の皆さんがコンサートを支えたことからも篠原さんの人柄が伝わ

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