「ツール・ド・北海道」、来年開催は困難 死亡事故受け、対策に時間

石垣明真 上保晃平 福岡龍一郎

 国際的な自転車ロードレース「ツール・ド・北海道」で9月8日、競技中に対向車線を走っていた車と衝突して出場選手が死亡した事故を受け、来年の大会開催が中止の見通しであることがわかった。主催する「ツール・ド・北海道協会」の関係者が明らかにした。

 同大会は1987年から続く国際自転車競技連合(UCI)公認のレース。9月の37回目大会には6カ国の約100選手が参加したが、死亡事故をうけて打ち切られた。

 協会は、事故の再発防止のため、交通安全や自転車競技の専門家ら5人による安全対策検討会を発足。10月29日の初会合では、大会当時、選手集団の前で対向車に注意を呼びかける「先導車両」がいなかったことが明らかになった。検討会は今年度末までに安全対策をまとめる方針だ。

 だが、協会関係者によると、議論が長期化する可能性があり「結論が出ないと、大会は開催できない。来年の開催は困難」という。

 国内の他の国際レース「ツール・ド・おきなわ」や「ツール・ド・熊野」は、両側2車線の規制を基本としている。一方、ツール・ド・北海道は毎年、原則として片側1車線を使用する形で行われていた。

 こうした大会運営を踏まえ、日本自転車競技連盟(JCF)の専門部会は昨年、同協会に対し、レースで事故が起きる危険性を文書で指摘。

 さらに、大会の元運営関係者によると、10年ほど前にもUCIから同協会に安全性に関する警告があった。UCIの規則では、レース中の選手が通過するときには「コースにおける全ての交通は停止させなければならない」と定めているのに対し、大会では選手が通過する際、対向車が停車していなかったことが理由だったという。

 今回の事故で亡くなったのは、中央大の五十嵐洸太さん(21)。高校時代に自転車競技部のチームメートだった男性は、「(五十嵐さんは)どんなレースでも積極的に前方に位置を取り、果敢に攻めていく選手だった。体力を温存するために保守的な行動を取る選手も多い中、常にそんなスタイルを崩さないところを仲間として尊敬していました」としのんだ。(石垣明真、上保晃平、福岡龍一郎)…

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