宝塚歌劇団員死亡、遺族側が会見 長時間労働とパワハラが原因と主張

宝塚歌劇団問題

楢崎貴司
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 宝塚歌劇団兵庫県宝塚市)の劇団員の女性(25)が9月末に死亡した問題で、遺族の代理人弁護士が10日、東京都内で記者会見を開いた。死亡の原因は、月250時間を超える時間外労働といった長時間労働や、複数の上級生(先輩劇団員)による暴言などのパワーハラスメントにあったとし、歌劇団と運営する阪急電鉄に対して事実に基づく謝罪と適切な補償を求めていくと訴えた。

 女性は9月30日朝、宝塚市の自宅マンションの敷地内で倒れて亡くなっているところを発見された。兵庫県警宝塚署は自殺の可能性が高いとみている。

 弁護士によると、女性は入団7年目で宙組(そらぐみ)に所属し、新人公演への出演者の「『長の期』の長」と呼ばれるまとめ役を担っていた。同期生は女性を含めて8人いたが退団などで2人に減っていた。新人公演に向けた稽古や約45人いる下級生の指導のほか、女性は演出家の補佐、役柄配置の決定、シナリオ作成といったものまで担っており、歌劇団は極めて過重な業務を課していたとした。

 そうした中、宙組本公演に向けて8月16日から稽古を開始。並行して新人公演の準備もあり、亡くなる前日までにあった6日間の休日も作業に費やし、実質約1カ月半の連続勤務だったとした。

 女性は歌劇団との間で入団から5年目までは1年ごとの有期労働契約で6年目以降は業務委託契約を結んでいた。ただ、歌劇団は契約書で稽古への参加などを義務づけており、弁護士は「実質的に労働契約だ」と主張。歌劇団には心身の健康を損なうことがないように注意する安全配慮義務があるとしている。

 弁護士は体温測定の記録や母親とのLINE(ライン)のやり取りなどに基づき、8月31日から1カ月の総労働時間は437時間、そのうち時間外労働が277時間だったと算出した。稽古は午前9時ごろから翌日午前0時ごろまで続き、帰宅後もシナリオ作成などをし、睡眠時間は3時間程度が続いていたとしている。

 パワハラについてもラインの記録などから確認した結果、2021年8月には上級生から「前髪を巻いてあげる」と言われ、ヘアアイロンを額に当てられ、やけどを負ったという。このことを週刊文春が今年2月に報道すると、上級生から詰問されたうえ、女性から事情を聞き取った劇団側は一方的に事実無根と発表した。亡くなる直前は別の複数の上級生から頻繁に呼び出され、「下級生の失敗は、全てあんたのせいや」「マインドが足りない。マインドがないのか」「うそつき野郎」などの暴言を受けたという。

 会見では遺族である両親と妹によるコメントが読み上げられた。「宝塚歌劇団に入ったこと、宙組に配属されたことがこの結果を招いた。常軌を逸した長時間労働により、娘を極度の過労状態におきながら、見て見ぬふりをしてきた劇団が責任を認め謝罪すること、パワハラを行った上級生が責任を認め謝罪することを求める」などとしている。

 会見した川人博弁護士は「日本を代表する芸術・芸能分野の劇団である歌劇団で将来ある若い女性の命が奪われたことは極めて重大だ。阪急は全力をあげて適切な対処を行わなければならない」と訴えた。(楢崎貴司)

宝塚歌劇団と阪急電鉄がコメント

 9月末に死亡した宝塚歌劇団劇団員の女性(25)の遺族の代理人弁護士が開いた会見を受けて、歌劇団と事業主の阪急電鉄はそれぞれコメントを出した。

 歌劇団は「宝塚歌劇団として大変重く受け止めており、ご遺族に対して誠実に対応して参りたい。今後、外部弁護士による調査結果をふまえて真摯(しんし)に対応して参る所存です」とコメント。阪急電鉄も「阪急電鉄としても、大変重く受け止めております」とコメントした。

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    澤路毅彦
    (朝日新聞編集委員=労働)
    2023年11月13日7時55分 投稿
    【視点】

    記者会見に参加しました。ハラスメントに関する部分とは別に、私が注目したのは会見で明らかにされた契約形態です。  亡くなった女性は業務委託契約だったのですが、5年目までは有期労働契約ということでした。他の劇団員も同じ扱いだそうです。  関

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