作品に罪はない? ジャニーズ性加害問題で松尾潔さんが取るスタンス

 旧ジャニーズ事務所(現SMILE―UP.)の性加害問題でマスメディアの沈黙が指摘されたが、もう一つ、沈黙していると言っていい業界がある。音楽業界だ。楽曲の制作・発売という面で密接な関係にあるにもかかわらず、ミュージシャンらがこの問題で強いメッセージを発した記憶がない。そんな中、平井堅やケミストリーのプロデュース、EXILEへの楽曲提供などで知られる松尾潔さんは、この問題についてメディアで発言を繰り返す数少ない「業界人」の一人だ。ただ、発言を巡っては、関係者から思わぬ言葉をかけられたことも……。松尾さん、音楽は自由などとよく言われますが、音楽業界って不自由なんですか?(聴き手・滝沢文那)

まつお・きよし 1968年、福岡市生まれ。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。音楽ライターを経て、楽曲制作も手がけるように。プロデュースや作詞、作曲で関わったアーティストに、CHEMISTRY、平井堅、JUJUなど。プロデュース、作詞、作曲(共作)したEXILE「Ti Amo」が日本レコード大賞、天童よしみの「帰郷」で日本作詩大賞。NHK-FM「松尾潔のメロウな夜」は放送14年目を数える。

――松尾さんはメディアやSNS上で、性加害問題に対する事務所やメディアの対応に提言を重ねてこられましたが、そもそもジャニーズ関連の仕事はしましたか?

 「持ち込みやコンペとかではなく、事務所から直接ご依頼を受けて、SMAPや、NEWS、テゴマス、ジャニーズWEST(現WEST.)に6、7曲ほど提供しました。レコーディングに立ち会ったことは一度もないのですが、テレビやラジオで所属タレントと共演したことはあります」

 「音楽的な難易度にとらわれることなく、『ファンが愛せるものを作る』という観点で楽曲の精度を上げていく。これがアイドルという仕事なんだと感じました。僕の仕事のメインになることはありませんでしたが、そのシステムを生み出したジャニーズはすごいなと、素直に感服、敬服していました」

――音楽業界でも、当時からジャニー氏の問題は知られていたのでしょうか

政治的発言すれば、「選挙に出るの?」

 「うわさとしては耳にしてい…

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    松谷創一郎
    (ジャーナリスト)
    2023年11月11日13時44分 投稿
    【視点】

    今回の問題でジャニーズ事務所の取引先であるテレビ局やファンなどがしばしば口にするのが、「タレントや作品に罪はない」という定型句です。松尾潔さんは、その意見に一定の理解を示しつつもそこに留保を入れています。 大切なのは、この「留保」です

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    小林恭子
    (在英ジャーナリスト)
    2023年11月13日18時49分 投稿
    【視点】

    「作品に罪はない」。この考え方を今、ジャニーズ事務所と関連してどう受け取るべきなのか。松尾さんのインタビューを通して、グレーの部分があることもよくわかりました。 ジャニーズ問題から少し離れた視点で、書いてみます。 少し前に、反人

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