身近な卵の「裏」で 朝の仕事は死体取り出し、ボロボロになる鶏たち

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太田匡彦
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 ケージの中にぎゅうぎゅうに詰め込まれていました――。

 関東地方にある国内最大級の養鶏場で働いていた女性は、卵を生産するために飼育されている鶏たちの「過酷な現実」をそう語り始めました。ほとんど身動きが取れないケージのなかで傷つき、ボロボロになりながら、それでも人間のために卵を産み続ける、鶏たち。

 アニマルウェルフェア(動物福祉)への配慮は世界的な潮流になっています。でも日本の畜産は、その流れから大きく取り残されています。畜産動物のなかで最も飼育数の多い採卵鶏の現状を取材し、日本にもアニマルウェルフェア畜産が浸透する兆しはあるのかどうかを探りました。

現場へ! 鶏たちの「福祉」はいま①

 栗畑や農家が点在するなかに、白い巨大な建物がいくつも見えてきた。周囲を土手や雑木に囲まれた敷地内には、三角屋根の体育館のような建物が整然と並んでいる。関東地方に本社を置く鶏卵大手の傘下で、国内最大級の養鶏場の鶏舎群だ。

 窓のないウィンドレス鶏舎だからだろうか、換気にともなう音がひときわ大きく聞こえる。風向きによっては時折、鶏の糞(ふん)と思われる臭いがただよう。鶏舎は全部で12棟あり、計約120万羽の飼育能力を備える。出荷される卵は1日100万個近くにのぼるとされ、東日本各地の卵の需要を支えている。

 いま西日本の別の養鶏場に勤める女性(49)は2020年、ここで働いていた。「鶏たちは、ケージの中にぎゅうぎゅうに詰め込まれていました」。当時をそう振り返る。

B5判よりもずっと狭いスペースで

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 飼育に使われているのはバタ…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年11月13日15時0分 投稿
    【視点】

    アニマルウェルフェア(動物福祉)の推進には、生産の現場を変えるには、”消費者の意識を変える必要がある”という観点が欠かせない。 (畜産家のコストが増えるので)卵の値上がりを避けられないこと、「価格転嫁(かかくてんか)」への理解を深めること

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    岩本菜々
    (NPO法人POSSE学生メンバー)
    2023年11月13日16時31分 投稿
    【視点】

    <エシカルな卵を買う、それだけでこの問題は解決するのか?> たった一人で10万羽を管理。過酷な環境で弱った鳥は移動させてそのまま放置…養鶏場の凄惨な情景が語られていて、圧倒されました。 いかに安く、効率よく、沢山生産するか…工場で何かの部

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